第六十八話 トイレの花子さん


 ある中学校のトイレには『花子さん』が出ると言われている。


 だがそれは、一般的に伝わる怪談とは別物。



 校舎三階の女子トイレ……その一番奥の扉に入り『とおりゃんせ』を一小節毎に区切り間を空けて歌うと、隣のトイレから壁を叩かれるのだという。


 中学生というのは多感な年頃で、これを試そうとする者は後を絶たなかった。


 だが……ある少女が三階ではなく一階でそれを行ったことで事態が一変する。


 絶叫、そして嘔吐……一階でそれを行った少女は、何らかの発作を起こし救急車で搬送された。



 その場に居た少女の友人は教師達にこう語った……。


「あの時、突然誰も居ないトイレのドアが閉まって、勢い良く壁を叩く音が……怖くなって逃げようとしたら、あの子が足を捕まれて逃げられなかった」


 話を聞いた教師がトイレの中に確認に向かうと、奥から二番目のトイレの壁には血の様な赤い手形がビッシリと付いていた……。


 以後、この学校では『トイレの花子さん』の話が厳禁になったのは言うまでもない。

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