第三十二話 生首


 新宿の繁華街。男がそのビルの裏道を通った際、道の真ん中に生首が転がっていた……。



 男は事件かと思い混乱したが、誰もそれに気付く様子がない。改めて見れば周囲には血の跡も見当らない。

 『これは知らぬ振りをした方が良い』と直感した男は目を逸らし通り過ぎることにした。



 だが……次に同じ場所通った時、生首の数が三つに増えていた。しかも一つは一目で判る外国人。これも素知らぬ顔で通り過ぎる。


 最後に生首を見た時、増えた首の中に見覚えのある顔があった。それはこの辺りでヤクザと揉めた風俗店の店長の顔だった……。

 その店長は数日前から行方不明で未だに見付かっていない。



 男に何故生首が見えたかは分からない。だが、男は二度とその通りに近付くことはなかったという……。


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