第三十三話 リサイクル


 ある男が、リサイクルショップで小さな箪笥たんすを購入した。


 桐で作られ金具を打ち込んだしっかりとした造りの箪笥は、かなり格安で販売されていたのだ。



 ある日……そんな箪笥の引き出しを開ける時、何かの拍子で留め具が外れ底板が外れてしまった。

 中古品だから仕方無いかと思っていたが、どうやら隠し棚になっていたらしい。


 そんな隠し棚には小さな箱が嵌まっていて、取り出して確認したその中にはサラシに包まれた金の指輪が入っていた。


 幸運とばかりに質屋に売ると、箪笥の値段より高く売れたので更に大喜び。その日は少しだけ贅沢な夜食となった。



 だが、その夜──寝苦しさに目を覚ますと、枕元に着物の女性が座って泣いている。


 声も出せず凝視していると、女性はか細い声で一言声を発した。


「指輪を返して……」


 この一言で全てを察した男は、後悔することしか出来ない。


「指輪を返して……」


 繰り返す着物の女……だが、やがて寝ている男に顔を近付け恐ろしい声でこう告げる。


「指輪を返さないなら……殺す」


 そのまま首を絞められた男は気を失った。



 翌朝──目を覚ました男は質屋に一目散。


「ゆ、指輪を買い戻しに来ました……」

「ああ……来ると思ったよ」

「え……?」


 話を聞くと、質屋の店主も同様の目にあったのだそうだ。


「ウチにも稀に『いわく付き』が流れてくるけど、これはちょっと強過ぎるね。取りに来てくれて助かったよ」


 謝罪して買い戻した指輪を箪笥に戻し、男はリサイクルショップにタンスを返品した。



 次に箪笥を買う者が、あの隠し棚に気付かないことを祈るばかりである……。


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