第三十話 来客 



 両親が急な法事で外出した日曜日。小学生の少女は一人留守番をすることになった。



 外は雨が降っていて薄暗く、友達を呼ぶ気にもならなかった。


 そんな少女が居間でテレビを見ていると、不意に玄関の方から声が響く。分りやすい位置に呼び鈴があるにも拘わらず、それを鳴らさず呼んでいるのだ。


「ごめんください」


 始めは面倒で居留守を使っていたが、あまりにしつこく呼ぶので少女は玄関に向かい様子を見る。


「ごめんください」


 その声はまるで機械のように一定感覚で繰り返している。気味が悪くなった少女は応対をやめ両親に電話をした。


「お母さん!変な人が玄関にいるの!」


 しかし、電話の向こうからは両親のものではない声が……。


「ごめんください」


 少女は一気に怖くなり自分の部屋に駆け込み布団の中に潜り込んだ。


 しばらくして布団から顔を出すと、今度は突然窓を叩く音が聞こえた。


 少女の部屋は二階。驚いているところに、更にあの声が……。


「ごめんください」


 少女は悲鳴を上げ気を失った……。



 目を覚ましたのは両親が帰って来た後。娘の靴があるのに姿が見えないと、心配で部屋に様子を見に来たらしい。


 少女が縋り付き事情を説明すると、両親は直ぐに警察へ連絡。周囲を調べたが怪しい痕跡は見付からなかった。


 その後、少女の周囲に異常は起こっていない。



 だが、少女は思う。あの時、あの声に返事をしていたらどうなっていたのだろうか、と……。


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