第二十九話 喫茶店
とある喫茶店の話。
長らく常連として喫茶店に通っていた老紳士。来店するのは決まって夕方四時十分。お気に入りの場所は一番奥の座席。
ある時、老紳士と店主はこんな会話を交わした……。
「マスター。私は病気になってしまってね……しばらく入院することになった」
「それは大変ですね……あなたが来ないと寂しくなりますよ」
「仕方無いことだが、心残りはここのコーヒーが飲めないことかな」
「元気で退院して、また必ず来てください。いつでも待ってますから」
「ハッハッハ……そうしよう」
結局、老紳士は入院したまま他界。その話を聞いた店主は、老人が訪れるいつもの時間・いつもの席にコーヒーを供える。
それが習慣になった頃、一通の手紙が送られてきた。
『いつもコーヒーをありがとう。でも、もう充分頂いたよ。生まれ変わったら直接飲みに行くから、マスターも長生きして欲しい』
同封されていた小さな封筒にはコーヒーの代金が入っていた……。
手紙の差し出し日付は老紳士が入院した日。代金はその日までのコーヒー代の総額にピタリと一致していた。
手紙が届いたその日は、奇しくも老紳士が亡くなってから四十九日だったそうだ。
店主はパイプを燻らせ老紳士の冥福を祈った……。
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