第十三話 障子の目


 とある寺には妖怪が出ると伝わっている。妖怪の名は目々連……妖怪は客間にのみ現れるのだという。それ故、普段客間は障子紙を付けていない。



 だがある日……一人の客人が興味本意で障子紙を付けて欲しいと頼んで来た。


 住職は何度も止めたが、客人はどうしてもと譲らない。根負けした住職は紙を貼った障子を用意。客人は客間で夜を迎えることになった……。



 結局起きている間は何も起こらず就寝となり、期待外れと肩を落とした客人。だが、丑三つ時を過ぎた頃……客人は何かの音で目を覚ます。


 音の出どころは障子……そこには枡目一杯に目が浮かびカサカサと動いていた。


 恐怖のあまり気を失った客人は、翌朝早くに目が覚を覚ます。悪い夢だと障子に視線を向けた客人は絶句した。


 障子紙には、丁度目で覗ける程の穴が開いていたのだ。しかも一枡に一つづ、全ての枡目にである。



 客人の悲鳴に駆け付けた住職は、障子を確認し切々と告げた。


「目が妖怪なのか、それとも沢山の妖怪が障子に穴を開け覗いているのかはわかりません。ですが、あなたが興味を向けたからあちらも興味を向けたのです。興味本位は危険であることを努々お忘れになりませぬように……」

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