第九話 河原の厄


 河原の物は持ち帰ってはならないとその老人は言った。



 河原には厄を流す……その厄を持ったものが海に辿り着かない場合、淀んで溜まることがあるのだと。だから持ち帰れば厄を背負うことになるのだと繰り返し忠告していた。



 数年前……河原で新品同様のヘルメットを拾った若者は、それを被りスクーターに乗っていた。


 冬のある日、路面凍結した橋で滑り欄干に激突──放り投げられた若者は首の骨を折って死亡。


 留め具で固定していなかったヘルメットは河に落下……後に若者がヘルメットを拾った場所に流れ着いた。



 老人は語る。孫は厄を拾った為に死んだと。だから厄を拾いたくなければ河原から物を持ち帰るなと、繰り返し口にしていた……。


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