第三話 行ってはならぬ



 首都圏のあるマンションに伝わる不思議な話がある。


 それは外出する際エレベーターに乗ると、誰もいない背後から声を掛けられることがあるという住民達の体験談。


 その声は優しい声でただ一言……『行ってはならぬ』と囁くのだという。


 嫌な予感がした住民の一人は、仮病を使い外出を控えた……と思い返しながら語ってくれた。その結果、いつも出勤に使うバスの停留所に大型車が突っ込み危うく巻き込まれるところだった、と。



 そのマンションでは今でも時折『行ってはならぬ』という声が聴こえるらしく、その際住人達は外出を控えることにしているそうだ。



 マンションの敷地内には古く小さな地蔵が祀られており、献花や供え物が絶えないという。


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