第二章 今の己を知る
騨出はステータスを見て分かったことがある。
まずはここが地球ではなく、異世界である可能性。
そして着ている服が酷評されているということだ。
「いいさ。自分でもこの格好はないと思う……」
職業『ダンディ見習い(仮)』
Lv1
HP50 MP0
攻撃力13 防御力5(+5) 素早さ10 魔力0
ダンディ0.1
装備 くたびれたセットアップスーツ 900円のシャツ くたびれたネクタイ
SEIKOの腕時計(防御+5) 5個セットのソックス 傷んだ革靴
ボロボロのリュック
固有スキル ダンディズム 異世界言語 セレクトショップ[DIGI]
スキル 鑑定1 やせ我慢4 話術5
称号 異世界来訪者・ダンディを目指す者
所持金 163万5千2百円
(腕時計だけプラス補正が入っている。良い装備なら補正が付くってことか?称号は見たままだろうし気になるのは魔力と特殊スキルだな。魔力があるってことは地球で言う魔法のような存在があるかもしれない。)
騨出はアニメや漫画を嗜んでいるため、魔法といった存在はワクワクするのだ。
現時点では0のため、仮に魔法があるとしても現状使えないと判断し特殊スキルの考察に入った。
(ダンディズム、異世界言語、セレクトショップ[DIGI]か。鑑定で見れるのか?)
「鑑定」
ダンディズム ダンディな装い・行動・意識を持つことによって装備やステータスに補正値が付く。
異世界言語 自身のいた世界にない言語であれば理解し会話や読み書きが可能。
セレクトショップ[DIGI《ディーアイジーアイ》] ダンディなアイテムが購入できる。
「異世界言語か、このステータスを信じるなら今いる場所は間違いなく異世界ってことになるな。」
会社勤めでずっと同じことをしていた騨出は、この非日常的な空間を愉しみ始めていた。もっとも、口角が上がっていることに当の本人は気付きはしなかったが。
「プラスダンディズムの補正って腕時計に付いている(防御+5)のことか。たしかに身に着けている物の中では唯一マトモかもしれない……」
自分で言いながら傷ついてしまった騨出ではあり、たしかに今の姿はお世辞にも格好が良いと言えない。
だが、3つ目の固有スキルを注目してみよう。
「セレクトショップ[DIGI]。俺がダンディに近付けるためのスキルといったところか」
鑑定ではダンディなアイテムが購入できると出ていたため、たしかに今の騨出が欲しいスキルであり、ダンディになるためのアイテムを手に入れられる可能性がある。
(あの声も言っていたな。"目指す道へと近付ける力"だと。少し見てみよ…!!いや、セレクトショップ[DIGI]の発動方法は分かるが使用方法は分からないんだ。
もしかしたらお店で店員さんと話す必要があるかもしれないんだぞ!!!)
そう、この騨出という男は洋服屋さんで店員に話しかけられることが大の苦手なのである。
(買った本とかである程度勉強したり落ち着いてから使おう……)
なんとも肝の小さい男だろうか。
だが、たしかにこの見知らぬ土地、しかも森の中にいる状況で考えることではない。
騨出は別の機会にスキルを使うことに決め、生き残るための行動指針を手帳に書き込んだ。
1.水や食べ物。そして人、あるいは整備された道を見つけること。
2.この世界で生き抜く術を身に着ける。
3.町などの人がいる土地を見つける。
4.衣・食・住の確保。
この優先順位に則って行動を始めようとするも、ここは森の中であり周囲は背の高い樹ばかりである。樹に上って高いところから見渡すというのもむずかしいほどに木々は太く背が高いのだ。だが、その場にいても仕方がないことは自明であるため、当てなど全くない騨出ではあったが歩きはじめた。
道中ではあらゆるものに対して『鑑定』を夢中になってかけていき、鑑定結果の中で気になったものだけは手帳にメモを書きまっすぐ前へと歩き続けていた。『鑑定』をし続けて分かったこともある。周囲に生えている樹はほとんどが『メント』という名の針葉樹であり、中央大陸の東側に位置するらしい。
(中央大陸がどこで東がどっちかも分からないんですけどね!)
よく小説では星の位置を見て方角を把握しているが、彼はそのような知識は持ち合わせてはいないし、この世界でも天体が同じような配置になっているとは考え難い。
腕時計を見ると現在23時50分。勿論これは日本時間であり、現在いる場所はまだまだ日が昇っている。
重い雑誌をリュックに背負い2時間ほど歩い騨出は、既に額に汗を垂らしているが、目標の1つであったモノを見つけ笑みが零れた。
異世界ダンディズム 黒山 シノブ @takuyatthi
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