第7話 頭に障害がないのだから
重症の難病患者のほとんどは、脳に障害が出ることは少ないようです。
もちろん、幻覚を見たり、幻聴を聴いたりする病気もありますが、考える力に別状があるわけではありません。
ならば、重症の難病患者であっても、できる限りは、寝たきり等にはならずに、身の回りのことぐらいは、自分でやる努力をするべきではないのでしょうか。
もちろん、自分の筋力では、いつまでもできるわけではありません。
しかし、ケアマネージャーや障害福祉ケースワーカーに相談して、自分の創意工夫を加えれば、意外となんとかなるものです。
筆者は、球脊髄性筋萎縮症という全身性の疾患です。
すでに、立ち上がることはできません。
それどころか、左足は、ほとんど動きません。
しかし、車イスと介護ベッドの往復は、単独でやっております。
1人で留守番していても、困ることはありません。
インスタントと冷凍になりますが、食事の準備も自分でやっております。
自助具という道具を使ってはいます。
車イスと介護ベッドの移乗の往復は、介護用の電動リフトを、自分で操作するという、ケアマネやヘルパーには暴挙に見えるらしい方法を使ってはいますが。
『介助者が、要介護者を手伝うための道具を自分で使うなんて、無茶苦茶ですよ。』と、よく言われてます。
たしかに、電動リフトは機械物ですし、停電したり、故障したりする危険性はありますが、そんなことを恐れていては、生活が担保できません。
我が国の電力会社を信じるしかありません。
まぁ、寝たきりになっても、人工呼吸器や床擦れ防止用エアマット等々、電動ですし、介助者が居ようが居まいが危険性は変わらないと思います。
電気に頼っていては、万が一の災害の時に、停電したりするとどうするという不安を持たれる方がおられますが、重症の難病患者が避難できる場所なんて、ありはしません。
それどころか、避難所で迷惑になって、周りの人々に嫌な思いをさせて、自分も、嫌な思いをすることは目に見えてます。
生きていても、夢も希望もなくなってます。
嬉しいことも、楽しいことも、家族とすら共有できません。
何のために、生き残るんですか。自殺や安楽死を考えざるを得なくなっているのに、わざわざ、無理に生き残らなくても。
もう、そろそろ許して欲しいです。
そんなに無理して生き残っても、良いことはありません。
何事もない、平穏な日常の時でさえ、散々他人にご迷惑をおかけしているのは、重々承知しております。
そんな我々が、わざわざ非常事態の時に生き残って、人様にご迷惑の上塗りをしなくてもよさそうなものです。
それでも、社会福祉事務所の障害福祉担当者は、避難所の確認をうるさく言ってきます。
仕方なく、筆者は、かかりつけ病院まで車イスでも5分程度の距離に引っ越ししました。
かかりつけ病院は、公立ですし、当然避難所の指定を受けている病院です。
普通の避難所では、他人に迷惑ですし、生き残ることは不可能ですが、病院なら、生き残ることに最低限の設備はありますよね。
普段は、自宅自室の方が病院より、快適であるはずです。
自分専用の道具を自分専用に配置して、使い勝手が良いように改良している道具すらあります。
もちろん、介護保険でレンタルしている道具は、改良することはできません。
しかし、使い易い配置に置き換えることは可能です。
重い物の移動は、ヘルパーさんや介護用品レンタル会社の担当者と訪問リハビリのセラピストさんが、よってたかって、ワイワイ騒ぎながらやってくれます。
ただし、患者としては、月に1回開催される、自分の担当者が集まる、ケアマネ主催の担当者会議の時にお願いできるように考えておく必要はあると思います。
重症の難病患者の場合、自分の生き死には、自分のためではありません。
自分のためではない方が、頑張れるものです。
筆者の場合、後に続く同じ病気の仲間に道筋を残すと考えております。
女房のためなら、一刻でも早い方が死別再婚できる可能性が出ると思いますが、今以上の、関西オバチャンになれば不可能でしょう。
いや、すでに不可能とも思えます。
いくら自分が重症の難病患者だからといっても、あの関西オバチャン怪獣に化けた女房を人様にお任せしては、自分が生き残る以上にはた迷惑というものです。
絶対に野放しにしてはいけません。
したがって、自分で頑張るべきです。
女房を、関西オバチャン怪獣にしてしまった責任です。
などという、馬鹿なことを言いながら、重症の難病患者等という、認知症高齢者や死亡原因になるような病気の方々より大変な重症難病患者である自分を一番支えてくれる女房には、頭が上がらないくせに強がりを言いました。
本当にアホ以外の何者でもありません。
福祉施設のあるある 近衛源二郎 @Tanukioyaji
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