ひのとりをみて、とりをみて①

○月✕日の事である。その日は快晴であった。

宮部は照りつける太陽を背に受けて、鉄板のように暑くなったアスファルトの道路を歩いていた。右手には海が、左手には山が見える、そんな逃げ場のない道のど真ん中をだ。命を粗末にするなと心配してくれた読者には悪いが、ジャパリパークに道路はあれど車はほとんど通らない。たまに通るのは物資を運ぶ為のトラックか、ラッキービーストが自動操縦するスタッフカー、あとは走り回るロードランナーとそれを追いかけ回すコヨーテ程度の物で、おかげで排気ガスも出ない、空は綺麗だ。だからこそ、宮部の目にはもくもくと煙を上げて、てっぺんから火を吹き上げる火山の姿がよく目にうつったのである。


こうなるとひとまずは避難、警報、状況確認、そして火山の噴火によるサンドスターの噴霧、それにより新しいフレンズが生まれるのでそれらの保護、あっという間に彼らの仕事、書類、休日出勤届け、洗濯機をいつもより多く回すのでほんの少し電気代、そして残業代がみるみるうちに積み上がる。そしてこの時期はジャパリカフェが繁盛する。

「仕事が増えて給料が増えるのはいいけどこうやって使っちゃったら訳ねえなあ」

そう言って真柴がオレンジジュースをぐっと口の中に流し込む。年齢は見た目だけ見ると30前後、剃り残しのある青髭が残念で、都市伝説とかオカルトの類に目がない男だ。そして彼は宮部の先輩にあたる。

「お…お待たせしました、イチゴのケーキをおふたつと、モンブランがひとつと、限定抹茶あじジャパまんですね、」

店員のブラックマンバが少し緊張した様子で運んできてくれたのでひとつ会釈。

「ショートケーキとモンブランとジャパまんって、真柴さんよく食べますねえ」

「やっぱり仕事には糖分よ」

「流石に控えた方がいいですよ」

真柴はそう言って宮部を見た。

宮部は真柴の腹を見た。少しだらしなく見えたが、その言葉は胸の内にしまっておいた。

そのままストローを口にくわえて、リンゴジュースを少し減らした後、話を切り出す。

「しかしいきなり火山が噴火するとは思いませんでしたね」

そう言って目線を上げ、真柴を見る。

「いいや、俺は睨んでたぜ、あの火山はそう遠くないうちに噴火するってな」

「本当ですか」

嘘であろう。

「おうともよ、しかも俺ァ見たんだ。

あの火山が噴火する直前にな。」

「何をです?」


「光る鳥さ」

「はい?」


「俺は光る鳥が

火山に突っ込んでいくのを見たんだ」



宮部は彼が何を言っているのか分からなかった。サンドスター、フレンズ理論、セルリアン、セルリウム、その他パークのもろもろ、

オカルトに相違ない現実をパークに住むと否が応でも納得させられるが、彼はそれを見すぎておかしくなってしまったのだろう。しかしそうはっきり言ってしまうと彼の逆鱗に触れかねないのでまたしても宮部は口をつぐんだ。

やはり社会生活、清濁併せ呑むと言うやつが必要なのだ。

そんなオカルト話も程々に、周りのフレンズに知られても問題ない当たり障りのない世間話へと論点は変わっていった。この味のジャパまんが美味しいだの、ジャパリラインの乗り心地がどうだの、最近の新人がどうだの、PPPのファンクラブ会員が2桁である事の自慢などなどが、休憩時間が終わるギリギリまで続いた。

こんな時間が永遠に続くといいのに、とか思った頃に真柴がそろそろ出ようかと話を切りあげる。また仕事に戻るのだ。

宮部は

今現在2人に与えられた仕事は火山の噴火により生まれた新しいフレンズの保護だ。店を出たらくるりと右に曲がって虱潰しにフレンズを探していく、パークは気候が豊かだ、砂漠を歩けば汗が止まらないし、雪道を歩けば手足がかじかんで動かない。半ば惰性であるが、なかなか楽しい仕事だ。ただもう少しヒトにとって生きやすい環境ならな、と思う事がある。

ゴコクエリア、線路を伝って歩いているとポッケに入れていた無線機が鳴った。

倉馬くらまからの電話だった。彼はパークに務めてからまだ1年目、宮部の後輩で、困った事があるとこうしてすぐ無線で助けを乞う所がある。身長はあるがなかなか不憫なやつで、何かと失敗しては自尊心をすり減らしている。

「先輩、先輩、」

かなり慌てているように見える。というより聞こえる。

「えっと、今ゴコクエリアにいまして、見つけたんです、新しいフレンズ、でもその、言葉通じなくて、何言っても分からなくて、泣き出しちゃって、その」

とか言ってる倉馬も今に泣き出しそうだ、真柴にアイコンタクトを取ると、直ぐにそちらに向かうように言え、と念を飛ばされた。

偶然こちらもゴコクにいることを伝えると彼はとても安心したようだった。

「通話は繋いだままにしておけ、あと下手に刺激するなよ、安心させるんだ。あと言語形成初期段階だからあまり変な言葉を覚えさせるんじゃないぞ」

「は、はい!」

「今ゴコクのどこにいる?」

真柴が聞く、

「警備隊の拠点の、駅の中に、この子何か食べ物を探してここに入ってきてたみたいで」

「何か食べ物は?」

「ジャパリラムネしか…」

「なんてこった!」

2人は走った。駅の看板が見えてきた。

彼女を刺激しないようにゆっくりと入ると、そこには確かに怯える倉馬と、


生まれたばかりであろう

鳥のフレンズがいたのだ。

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今日もここはジャパリパーク モノズキ @monozukihurennzu

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