第5話 オワタ
パラリリン♪ と音が鳴った後、繰り返し画面上部に字幕が。
『ニュース速報』
『地球防衛軍は巨大UFOを壊滅へ追い込むことに成功』
やっ、たぁぁぁあああ!!
勝った……地球は勝ったんだ。
俺は他のチャンネルに変えて、人類の勝利の様子を確認。
どのニュースも破壊された宇宙船の無様な姿や、各国軍隊のヒーローインタビュー、自衛隊の勇ましい有志を伝えた。
避難所に詰めた一般人が勝利の一報を聞くと、皆肩を組んで母国の歌を合唱。
間違いなく勝利だ。
現地のカメラは、宇宙人達の最後を現場で中継。
UFOは爆発とともに装甲が砕けて、破片を撒き散らす。
破損したUFOが放つ火花は、独立を祝う打ち上げ花火のように綺麗だった。
どのチャンネルに変えても同じ報道ばかり。
さすがのテレ東も、人類史上、最高の栄誉を称えるに違いない。
俺はチャンネルを7に戻す。
するとテレ東は――――――――スペシャル特番として、『THEカラオケ★バトル』の再放送を流していた。
…………平和って、いいなぁ〜。
テレ東の安定した放送スケジュールは、日々の平和の大事さを教えてくれる。
流石に、これは言いすぎか?
宇宙戦争を終えた各国は、束の間の平和協定を続けた後、散開した。
歴史の戦争において終戦後、大概、議題として持ち上がるのが、戦争行為の正当性だ。
後の祭りにも関わらず、陰謀論を疑う政治家や研究者は「最初に攻撃を仕掛けたのは、地球側だ」と主張。
それを裏付けるようにネットに大国が持つ、弾道ミサイルの先制攻撃の様子がアップされていたが、筆で塗りつぶすように捏造疑惑が拡散し。
まぁ、平和になった地球には、今更どうでもいいことだが……。
今、重要なのは冷蔵庫の中身がほとんど賞味期限切れで、食える物がないということだ。
だが、この宇宙戦争を越えるXデイが、ラブストーリーのごとく突然やってくるとは、夢にも思わなかった。
今日のテレ東は午後から、映画『マッドマックス2』を放送。
鉄の仮面を着けた男が演説をしてる最中だった。
突然、番組が途切れた『臨時ニュースをお伝えします』と、テレビから聞こえてきた。
え? 今、なんて?
テレ東が……テレ東が臨時ニュースを流しただとぉ!?
俺はテレビにしがみつき、耳をそばだてる。
『臨時ニュースをお伝えします。太陽が超新星爆発を起こし、まもなく地球は爆発に飲み込まれます。これがテレビ東京最後の放送となる予定です』
俺様は震える手でリモコンのボタンを闇雲に押す。
どの局も最後の放送と口をそろえた上に、Eテレが無期限の番組休止になった。
そんなバカな! そんなのありえない?
俺様はリモコンを床へ叩きつけた後に窓の外を見た。
目が眩むほどの白色の光。
雲の隙間からカーテンが降りたような光線は、神々しく黄金の光を放っていた。
厚い雲を貫通するように光が強さを増すと、自分が黄金の輝きに包まれていくのがわかる。
あぁ……本当に世界は終わるんだな……。
そりゃそうだよな。
だって、あのテレ東が臨時ニュースを流したんだから……。
いや、もはやテレ東のスクランブル放送。
これは現実なんだ……。
これまで、この
異常気象、トータルディザスター、ゾンビウィルス、怪獣。
これは全て、太陽の異常によって影響し、変異が形となって現れた結果なのかもしれない。
宇宙人の襲来だって、滅びゆく地球の資源を、勿体ないから根こそぎ吸い付くそうとしたのかもしれない。
むしろ、地球人が母性とともに絶滅するのを、手を差し伸べ救い出そうとしていたのかも?
今となっては全てがわからない。
地平線から、まるで床に敷いた絨毯を勢いよくまくりあげたように、煙が迫ってくる。
徐々に目の前までその全貌が見えてくると、それは城壁のように高い炎の津波。
俺は逃れようのない運命を悟り、羽ばたく鳥のように両腕を広げ、全てを受け入れる。
フライアウェイ、フライアウェイ!
最後に、こだけは言わなければ。
「今まで、ありがとう――――――――――――テレ東」
>>>>>
銀河の片隅にある極小の光。
まるで微生物が最後の生命の輝きを放ったような小さな光は、太陽系第3惑星「地球」をパクリの飲み込み、あっという間に輝きは潰えた。
こうして、人類史――――いや、地球は終焉した。
【テレビ東京が臨時ニュースを流す日、世界は終わる】
終
テレビ東京が臨時ニュースを放送する日、世界は終わる にのい・しち @ninoi7
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