「コロははたして泥だんごをにぎれたのか」

「おまえさぁ」

「はい」

「あのさぁ」

「うんっ」

「そのさぁ」

「わうっ」

「あ、やっと鳴いた」

「え、もしかして未来さまそれを待ってたんですか! いくらでも鳴きますよ、わたしはいまも鳴けるんですよー、そう、公子になってもですわうわうばうばうっ!」

「……や。その。思い出したんだけどさ。言いづらくてさ。それにいまさらめっちゃどうでもいいことだし……」

「……なんでもどうぞですよ?」

「おまえさぁ、小学校んとき、大喧嘩して帰ってきたじゃん」

「んぅ。人間ごっこのお昼間のおはなしですか? そのときの、どれですか?」

「……あぁ。たしかにおまえ何度かトラブってたもんな……。あれだよあれ、小五んときのさ、泥だんごぶつけまくってやばかったとかいうやつ」

「あー、あれですかー。はい、覚えてます」

「俺、いまも気になってんだけど、おまえ泥だんごにぎれたの? あれもわりかし手ぇつかうだろ」

「ふふん、そういうことなら意外と犬はとくいなんですよ?」

「そうなのか?」

「そうですよ? だって犬って泥とか掘って泥と仲よしじゃないですか」

「それだからといって、泥だんごがスムーズににぎれるとはかぎらなくないか?」

「……ん。じつはですね、低学年のおすなば遊びで、練習してて。いざとなったらこの泥だんごを武器にしてやるんだ、って。もし、なにかあったら、……わたしはわたしでいま自分の身をまもらなきゃ、って」

「なんだよ、もしかしていじめとかされてたのか? そんな話は聞いてないけど……」

「ううん。……主人から離れた犬がどんなに心細いか、きっと未来さまにはわからないです、……未来さまは人間ですから」

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未来とコロのたのしい会話 柳なつき @natsuki0710

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