「……コロは恋したこととかなかったのか?」

「……コロは恋したこととかなかったのか?」

「えぇ? ないですよぅ。コロにはいらないものですよ?」

「でもおまえだってずっと中学生だったり高校生だったりしたんだろう。……そういう、色恋沙汰、みたいなものはなかったのか?」

「んぅ。なくは、なかったです。でもそういうのって向こうの勘違いなのですよ? わたしを人間だと見ちゃったからこその悲劇なのです」

「悲劇、と言い切るか……」

「んー。なにもはじまらないですし、わたしはなにも異種間恋愛をしたいわけではないのです……ねえそれよりご主人さま。ご主人さまは、きれいな彼女さんたちばかりでしたねえ」

「……ばかりってほどたいして人数もいないだろうが」

「うー、そうなのですか? けどみなさんきれいだったのです。……あのかたも、きれいだったなあ。ご主人さまはじめておつきあいされたときありましたよね」

「はじめて? どれだ? ……あぁ。館花家のお嬢さんか?」

「うん。あのひと、すごくきれいでしたね」

「……そうかなあ。たしかに顔が整ってはいたけど。おまえほどは……いや、なんでもない。まあ、美人といえば美人だったなあ」

「お顔も、だったんですけど。……なんだかぜんぶがきらきらしてて。あぅ。あの。……目が、きれいだったなあって。コロよく覚えてるんです。あのひとの目ってなんか違ったなあ」

「……写メでそこまでわかるもんかあ? しかもあんときなんてガラケーで画質も悪くてそこまでわからないだろ」

「えへへっ。……恋したこととかないって訊かれるとなんかやっぱりどうしてもですね、あのかたのことを」

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