未来とコロのたのしい会話
柳なつき
「コロはいつから自分を犬だと思ってたの?」
「なあ、コロ。おまえいつごろから自分が犬だって思ってたんだ、……というかそう思うことにしたとか言ってたっけか」
「うん、そうですよ。気づいちゃったのですよねえわたし。だって人間か人間じゃないかってすごくあいまいですよ? 平等ってみんな言うけど、人間が人間という種としてくくられたのってまだまだけっこうさいきんのことだと思うのです。いまだって刑法的な犯罪者は人権がなくなっちゃいますよね、ううんほんとは制限なんですけど。でも、うん、むかしは奴隷さんとかもいましたよね、そゆことですよねえ」
「……奴隷さんって。奴隷さんって。おまえそれ言いかた」
「うぅ、親しみをこめたつもりだったのですが」
「やめてくれ親しまれるとだいぶきついものがあるいくらいまの俺でも」
「うぅー? そですか? うん。でも犯罪者さんとか奴隷さんとかとコロはたしかに違いますね」
「だからその敬称」
「うぅ? うん。コロは主体的に犬であること選びましたからねえ。外のひとにも助けを求めるーといった感じではなかったでしょ?」
「いやだから最初からそれを訊いているのだが」
「あぁ、そかそか、時期ですか? 時期かあ……うーん。わたしもピンとここから犬になろ! ってわけじゃなかったしなあ。そういう自己認識ってグラデーション的に発達していくと思うのですよ。でもそのグラデーションの最初の灰色がどこだったかというと、そうですねえ、ご主人さまが呼んでくれたときかなあ」
「呼んで?」
「呼んでっ」
「……いつのどれの話だよそれ。おまえのことならもう数えきれないほど呼んでる。食パンの数とおなじレベルだぞ」
「……はじめて、呼んでくれたときですね」
「はじめて呼んだ? そんなん、ガキのときに出会っておまえに名前つけてからずっとじゃねえか」
「……えへへ。それではコロだけの胸にしまっておきますね」
「けっきょく俺答え聴いてないんだけど」
「未来さまがコロをはじめて呼んだときのこと思い出せば、わかりますよぅ、……えへへ、ペットの名前のパスワードみたい」
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