陰キャでぼっちな俺が、妹に更生してもらう!

お地蔵さん

第1話 俺は友達がいない。

友達がいないと、すごい生きづらい。

ペア組めって言われた時に、俺は誰とも組めないし。   

班を作れって言われても、俺だけいつも余る。

友達がいないと、とても生きづらいのだ。  


ーーーーーーーーーーーーーーーー


放課後俺はそそくさと教科書類を鞄にしまい早足で下駄箱に向かう。

他の奴らは男女同士でカラオケ行こうだとか飯食べ行こうだとか、いかにも高校生らしい会話をしているが、

俺はそいつらの間を通り、会話を遮るようにして帰路に着く。


そういや今日……誰とも会話してないな……


朝起きてからこの時間まで誰とも会話していなかった。

友達がいないので休み時間も机に突っ伏してねるふりするだけだし、

昼は一人で食ってるし、

そんな生活を送っていると声の出し方すら忘れてしまうことがある。

俺は涙が溢れないように上を向いて家に帰った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー  


「だぁーーーーーーーッ! 」


俺は学校で溜まったストレスを自宅の玄関に吐き漏らし、

しばらく寝そべっていた。

フローリングの床は固く、冷たい。

だが一定時間ずっと頬をくっつけているとだんだん自分の温度が床に移っていく。

人間関係もこんな感じなのかな……

そんな馬鹿みたいなことを考えてると、

ズシンズシンと地響きが下から聞こえてくる。


「え? なに? 地震? 」

「なにが地震よ!」


その声に驚き顔を上げると、そこには苛立ちの表情を見せた妹が立っていた。

妹は中学2年生で、俺とはまるでデキがちがう。

顔はいいのでモテるし、コミュ力抜群だし、友達たくさんいるし……

こいつが妹って信じたくなくなる時がある。


「なんだよ……」  


俺は嫉妬していた。

俺とは真反対の、完璧なこいつに。


「なんでそんなとこで寝てるの?風邪ひくよ」

「うるせぇ、俺は床とお友達になってんだよ。」


自分でもなにを言ってるのかわからなかった。

馬鹿げたことを言ってるが、それでもどこか正しさがあるような。    

俺が寄り添えば俺と同じ体温に、俺と同じ暖かさに。

いつも無愛想に踏みつけていた床だが、こんなにもいいやつだったなんてな。

今度からスリッパを履いて歩かなきゃ。


「友達いなさすぎて頭でも狂った? 」 


否定できなかった。

友達がいないと人生生きにくいし、

正直学校では涙が出るほど辛いし、悲しい思いをしてばかりだ。

俺は今の言葉に心を打たれ、つい涙が溢れ出てきてしまった。


「なに、どしたの? 」


号泣してる俺を見て妹が呆れ顔をする。

それもそうだ。

友達がいないからなんて理由で高校二年生が泣いていいはずない。

俺は泣くのに必死で言葉を発すことができなかった。  

ダメだな俺は……

精一杯泣いてから呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がり俺は口を開いた。


「ごめん……こんなダメ兄貴で……」   


俺はそういい自分の部屋に戻ろうとすると、その背中に暖かく、今までに聞いたことないぐらいの優しさ、そして呆れを感じさせる声で妹が言葉をかけてくれた。


「まぁ何かあったら私にいいなよ。力になるから。」

  

人の暖かさを久しぶりに感じた。

俺はせっかく泣き止んだのにまた大泣きしてしまった。

だがその涙を隠すように上を向いて自室に戻る。


「ありがとう……」


ありがとうなんで言葉久しぶりに使ったな……

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