序章3:洞窟からの脱出Ⅱ

 二匹目のゴブリンを倒せたはいいけど、仕留め損ねて叫ばれた。


 そのせいで、こちらに複数の足音が向かっているのが聞こえる。


 ゴブリンの魔石と短剣を急いで回収して、レベルが上がったのでSPを振る。


 ◆


 カケイ アズサ 16/男 冒険者Lv4 SP0


 HP90/90 MP25/25


 攻撃:19+3

 敏捷:19+9

 耐久:19

 知力:19

 技力:19+15

 

 【アイテムストレージ】【投擲】【パリィ】


 ◆


 バレてしまった以上、作戦もクソもない。

 逃げるしかないと思ったので、敏捷に全部振った。


 盾を装備して、逃げる準備をする。

 ぶっつけ本番になってしまうけど、パリィで突破するしかない。


 深呼吸をして、覚悟を決める。


 牢屋を出て、曲がり角で剣を構えて待機する。

 先制攻撃をしたら、後は猛ダッシュで逃げるのみ。


 落ち着いて・・・先頭の奴が見えたら全力で剣を横に振って・・・

 怯んだ所を猛ダッシュで抜ける・・・


 やる事を頭で何度も何度もイメトレしながら、剣を構えて待つ。


 そして、足音が近付いてきて・・・先頭のゴブリンが見えた。


 「ふっ!」

 「ギャッ・・・」


 綺麗に不意打ちが決まって、一匹は仕留められた。


 そのまま曲がって走りだそうとしたが・・・


 「「ギャア!」」

 「「「ギャギャ!」」」


 思った以上に数が多くて足を止めてしまった。


 その数、八匹。


 こんな数相手にしてられない。

 少しでも身軽になるために剣をストレージに入れて、盾を両手で持つ。


 「ギャ!」

 「ギャギャ!」


 二匹が短剣を持って飛び掛かってきた。

 俺に向かって振られた短剣を、盾で弾いて前進する。


 こんな事全く経験ないのに頭にパリィの方法が浮かぶ。

 やっぱりスキルのお陰なのか?

 何にせよ、相手の攻撃を受け流せるのはありがたい。


 俺に攻撃を弾かれて体勢を崩した二匹が背後から襲ってきたらどうしようもないので、そのままの勢いで前へと走る。


 正面にいた二匹の内の一匹を盾で突き飛ばしてもう一匹にぶつけて怯ませ、右から攻撃してきた一匹を盾で弾く。

 次に左の二匹の攻撃を盾で弾いて・・・右にいたもう一匹は距離があるので無視。


 よし!上手く抜け――――


 「イ゛ッ・・・てぇ・・・!?」


 抜けられたと思った瞬間、左肩の辺りに激痛が走った。

 だけど、足は止めない。全力で走り続ける。


 洞窟を抜けてもただひたすらに走って、走って、走って。

 息が切れて走れなくなるまで走り続けた。



 ▽



 どこまで来たかはわからない。外は夜だった。

 洞窟を抜けた先は森だったが・・・森はまだ抜けられていない。


 逃げている途中で水の音がしたのでそちらに向かって走っていると、川があった。

 疲れてもう走れないので、見つからないように茂みに隠れて休憩する。


 激痛の走った左肩にはゴブリンの短剣が刺さっていた。

 ゴブリンが投げてきたのが刺さったんだろうか・・・?


 めちゃくちゃ痛いけど、まだ肩でよかったかもしれない。

 足なんかに刺さっていたら、確実に逃げられなかった。


 短剣を刺さったまま放置する訳にもいかないので、ストレージから別のゴブリンの短剣を取り出して服の袖を切る。


 元の世界で友達にミリオタがいたのでサバイバルの知識はほんの少しあるけど、応急処置の仕方はわからない。

 なので、とりあえず引き抜いて川で洗って傷口を服の袖で縛ろうと考えたんだけど・・・短剣に触れるだけで痛すぎて抜けない。


 俺の中で、まだどこか夢なんじゃないかって思っている部分があった。

 だけど、この痛みと疲れが現実だと嫌でも知らせてくる。

 チートもクソもない、ゴブリンにすら殺されそうな現実が。


 そんな事ばかりを考えていても短剣が勝手に抜ける訳じゃないので、覚悟を決めた。

 周囲にゴブリンがいない事を確認して、川の傍に来て、深呼吸。

 息を止めて一気に抜いた。


 「あ゛ッ・・・つぅ~・・・」


 自分の喉から出たとは思えない声が出た。

 それくらい痛い。痛すぎて涙も止まらない。


 血が一気に出てきたので軽く洗って急いで縛る。

 やられたのが利き手の肩じゃなくてよかった。

 逆だったら上手く縛れなかったかもしれない。


 再度茂みに隠れて、痛みを紛らわせるためにステータス画面をチェックしてみる。


 ◆


 カケイ アズサ 16/男 冒険者Lv7 SP9


 HP43/150 MP13/40


 攻撃:28+3

 敏捷:28+9

 耐久:28

 知力:28

 技力:28+15

 

 【アイテムストレージ】【投擲】【パリィ】【ヘビースラッシュ】【逃走術】


 ◆


 元のHPが90だったから一発で半分以上貰ったって事かよ・・・

 MPも減ってるのは逃走術とかいうのも覚えてるから多分これで消費されたのかな?


 ヘビースラッシュとかいうのが一瞬何なのかわからなかったけど、取得したお陰か自然と使い方が頭に浮かぶ。まあ・・・そのまま強攻撃だな。


 今の所ステータスが30を超えたらスキルを覚えているから、耐久と知力も少しポイントを振ってみるか。


 ◆


 カケイ アズサ 16/男 冒険者Lv7 SP7


 HP43/165 MP13/45


 攻撃:28+3

 敏捷:28+9

 耐久:28+3

 知力:28+3

 技力:28+15

 

 【アイテムストレージ】【投擲】【パリィ】【ヘビースラッシュ】【逃走術】【防御】【初級魔法】


 ◆


 予想通り、二つ習得した。使い方も頭に浮かんだ。

 防御は・・・まあ、そのまんまだな。


 初級魔法、これがデカい。

 ファイア、アイシクル、エアカッター、サンダーの4つが使えるらしい。

 後ろ3つはともかく、いつでも火を起こせるのは本当に助かる。


 消費MPがわからないので、試すのは後にしよう。

 今は少し休憩して、この後どうするかを考えないといけない。

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異世界転生は地獄の始まり もももの門 @momomo_no_mon

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