第23話 取り除かれる影
「ウオオオオ!」
サクラが校庭の中程まで入ってくるとムリドはシンがドアイラトにしていたようにサクラの周りを走り始めた。
「何させてるんですか!」
モンクは言った。
「別にオレがおかしくなったんじゃないよ。1つの手段だ」
「手段って……?」
「わからないかい?」
「あっ」
モンクは声を上げた。
「何?」
ローズは尋ねた。
「つまり、これは勝敗が大事なんです」
「勝敗?」
「そう、今回は本の中身で言うとキュラって奴のせいだと考えられます」
「きゅら?」
「はい。キュラは噛みつくことである程度のものはコントロールができるようになります。特に首です」
「えぇ……」
ローズは本題ではないとわかっていたが首を噛む奴がやってきているという事実に気分を害した。
「ええ、それの解放に勝敗が必要なんです」
「でも、なんでムリドなの?」
「それはですね。その存在の得意分野での敗北感が大切だからです」
「なるほど」
アルデンテスはサクラが運動に自信があることを知っていた。そのことでそれ以上のパワーがあるムリドの運動能力を見せつけることで敗北感を味わわせようというわけだ。
「でも、なんか嫌だなぁ」
「何がですか?」
「何かで負けてもらわないとなんて」
「ということはやっぱり見えないんですか?」
「……うん……見えてたらサクラはもう元気だよ。きっと」
数分後。
サクラの体から影がとれた。
その場で倒れそうになったところをムリドが受け止めた。
「オシ! 大丈夫か!」
ムリドは叫んだ。
「サクラ! 大丈夫?」
ローズは尋ねた。
「ローズ、ごめん」
「いいんだよ」
ローズはサクラに微笑みかけた。
「キー、何かが切れた!」
「ど、どうしてお前がここに?」
「あ? 何だ? 男か男には興味ないから。じゃ、助かったとおもえよ」
「飛んでった。よ、よかった。た、助かった」
「あれリムじゃない?」
「そうだな。なぁ戻ろうぜ」
「嫌よ」
「どうしてでヤンス?」
「私はここに居たいの」
「ちょっとくらい遠くに行くくらいのことだろ? いいじゃないか」
「うるさいわね。喋ってたら振り向いちゃったじゃない」
「寄って来てるな」
「いいわ。中途半端に手を上げていることを後悔することになるだけよ」
「おい。何するんだ?」
「あなたたちは寝てたから見てないでしょう? いいもの見せてあげるわ」
「オウ! 期待してるぜ」
「はあ……」
「どうした?」
「あんたもなの?」
「何がだ?」
「……もういいわ」
「はあ……はあ……あ、あのねローズ」
サクラは言った。
「無理しないで」
「ううん。僕は大丈夫だよ。息も整ってきたし」
「よかった」
サクラは今横になっていた。
キュラの力で体力が削られてしまったためか顔色が悪く苦しそうにローズには見えた。
「ヒントにもなるかわからないけど、1つ聞いてほしい」
「うん」
サクラはローズたちと別れたあとの話をした。
家へ帰ると静かで途端に眠気に襲われたものの倒れた衝撃で目を覚ました。
自分の体調以上に家の静かすぎる様子を不審に思いリビングまで行くとサクラの母が大男に首を噛まれていた。
サクラの父は気絶したように倒れていた。
そこまで確認して意識が無くなった。
「ということなんだけど」
「ありがとう」
「何かヒントになるかな?」
「うん。サクラはゆっくりしてて」
「わかった。あともう1つお願いがあるの」
「何?」
「どうかそいつを倒して」
「任せて」
ローズは深く頷いた。
サクラは微笑み安心したように目をつぶり眠りについた。
「さて、どうしようか」
ローズは言った。
皆の表情は暗かった。
「本でわかるのはどんな能力で何をするかくらいで、あ、あとそれから名前もわかるんですけど、どこにいるかまでは……」
モンクは言った。
今回も周囲に迷惑がかかっている。
リーマーの時よりも本体が動いて何かをしている。しかし、それしかわかっていない。
「誰か場所がわかれば……」
ローズは囁いた。
その時、「ザザッ」と音を立てて紙が舞った。
中には見た事のある描き方で地図が描かれていた。
そして、
「今は俺っちのことよりそっちを優先した方がいい」
というメモ書きもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます