第20話 真偽を知る術
シンは姿を消した。
「そんじゃ」というなり姿形が見えなくなった。
そして、その場には次なる目的地を示したメモ紙が残されていた。
ローズの感覚では状況は一刻を争うのではないかと思っていたが未だシンが示した場所へは行っていない。
理由はシンのメモがザックリしすぎていて、現在位置からの線による経路と「ココ」という矢印付きの文字しか書いていないことではない。
「今回はどうしてもついて行きます! モンクもムリドも居ることですし私と2人でも大丈夫ですよ!」
とドアイラトが言ったことで準備ができるのを待っているわけだ。
「オレは?」
とアルデンテスは言っていたが、
「忘れてました。テヘッ」
で済ませようとするのが今のドアイラトらしかった。
さて、何故ドアイラトを待つのか、何が準備しているのか、理由は単純明快で、
「ナーナー」
「い〜こですね〜」
ドアイラトは今、クドーと遊んでいるのだ。
「オイ! ドアイラト、もういいんじゃないか?」
ムリドは言った。
「あと少し、あと少しですから」
「これが空を飛んで私を尻尾で刺してきたやつかなぁ?」
ローズはため息をついた。
「悪魔ってなんだっけ?」
しかし、ローズの疑問はそれだけでは無かった。
一刻を争うとは思ったものの起きていることの割に時間感覚が薄い。
そのうえ時計を確認すると時刻がスロス救出時から動いていなかった。これではまるで時が止まってしまったかのようにだとローズは思っていた。
リーマーは居なくなったものの何か理由があるのでは無いか? と思いつつもモンクやアルデンテスに問う勇気は今はローズには無かった。
「行きましょう」
とドアイラトが言ったとき、ドアイラトはクドーを胸に抱えていた。
「こんなことならクドーも一緒にって言えば早かったなぁ」
ローズは言った。
と同時にローズの口撃魔法が今は目に映った文字に対応した言葉でしか効果が現れないことを不便に思った。
「しかし、ザックリですね。これであってるんですか?」
ドアイラトは言った。
「わかんない」
ローズは答えた。
「それよりもドアイラトは意外と顔が広いの?」
「と言うと?」
「知り合いは多い感じ?」
「そうですね」
ドアイラトは首肯した。
アルデンテス、ムリド、モンクを残して、ローズ、ドアイラト、クドーでシンの示す場所を目指していた。
紙の裏には「真偽のわかる美女がいる。コイツがいれば俺っちを信用できるでしょ」と書かれていた。
確かに嘘をついていないと分かればシンを信用できるがその美女が嘘をついたら分かるものなのか? というのがローズの疑問だった。
「大丈夫ですよ」
ドアイラトは言った。
「多分思ってることは心配しなくていいですよ。その美女とやらはアタシも知ってます。見るまでの楽しみにしておくといいです。奇妙ですから」
「え? どういう風に?」
ローズは言った。
「お楽しみですよ」
「ナー」クドーも知っているのかドアイラトに続いて鳴いた。
「ね? クドー?」
「ナー!」
ローズにはますます意味がわからなかった。
「よく来たねお嬢さんた・ち」
シンの地図は合っていたらしかった。着くなり、美女は声をあげた。
「リーマーの気配が無くなったってことはあなたたちのおかげかしら?」
「おかげ?」
ローズは言った。
「あら? 気づかなかったの? それもそうねリーマーの前でも起きてたのでしょう? アイツはいつもいつもところ構わずワタクシを寝かせるもので! オホホ」
「イライさん。おしゃべりはいいでしょう」
ドアイラトは言った。
「あら、話が早いじゃない。ワタクシをしってるのかしら?」
「そりゃもちろん」
「ワタクシも随分名を馳せるようになったってことかしら」
「違いますよ。アタシはドアイラトです」
「ハッ! ドアイラト? 本当に?」
「ええ」
「あらー可愛らしくなっちゃったのねぇ」
「そうなんですかね?」
「さ、さぁ」
ドアイラトの問いにローズは微笑を浮かべた。
そして、ローズはすでにドアイラトが奇妙だと言った理由に気づいていた。
イライと呼ばれた美女の頭上に○✕があるのだ。○が赤。✕が青になり。話すたび濃くなったり薄くなったりしているからだ。
「プフッ」
ローズは吹き出した。
「何よ? 何か文句あるの?」
イライは言った。
「いえ」
ローズは言った。イライの頭上の赤○は爛々と輝いている。
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