第17話 夢との決着! 目覚めは最悪……
「起きないなら仕方ないわ!」
デスは言った。
「ああ! 任せた!」
ムリドは言った。
「ま、待って!」
デスとムリドは初めて聞いた声に振り返った。
「わ、私は? 私はどうしたら?」
そこには1人の少女が立っていた。
「知らないわ」
デスは言った。
「え?」
少女は言った。
「ひどいじゃないか! まだ子どもだぞ!」
ムリドは言った。
「なら、相手はあんたがしてなさいな」
デスは言った。
「俺が!?」
「いいわね?」
デスは返事も待たずにリーマーへ向けて駆け出した。
「俺はヒトの子どもの相手なんてわかんないぞ」
ムリドの顔には困惑の表情が浮かんでいた。
「お兄さん名前は?」
少女は言った。
「俺はムリド。君は?」
「私はリム」
「そうか、ここにいれば安心だ。お姉さんがどうにかしてくれるぞ」
「よかった」
少女は口角を上げた。
「おかしいわ!」
デスは言った。
「何がだ? お前の攻撃が俺に効かないことか?」
リーマーは言った。
デスが駆け出してからもう数分と経ったがリーマーは未だダメージとしてやられているような素振りを見せていなかった。
ローズたちが倒れたことでデスは頭を使うことをさけていた。
理由は現状得られる情報が信用に足る可能性が下がっていたと判断下から。
いくら女神としての自信があろうと判別のつかないことに確信は持てないのがデスだった。
「そろそろ諦めたらどうだ?」
「そんなことすると思う?」
「フッ……しないか……?」
「当たり前でしょ。私は女神よ」
「ハハッ。そんなことがあるか? リーマー様すら相手するのに手こずる神が居るのか?」
「あんたも夢を見てるんじゃない?」
「何?」
「自分の体を理解してないわ」
リーマーはやられっぱなしでいっこうに攻撃の気配が無かった。
それもそのはず、デスにはリーマーの傷が見えていなかった。しかし、何故なのか理由を理解するには十分だった。
リーマーは小さくなっている。
体を小さくすることによってダメージがあたかも効いていないような感覚を攻撃者――今回ならばデス――に抱かせていただけだったのだ。
デスの目は見た目の変化には鋭い。
「悪いけど、あんたは見せすぎだわ。女神として当然の能力をなめないことね」
「だからどうした? お前に何ができる?」
「もう遅いのよ」
デスの左手は光を帯びた。
日の光のような光は瞬間辺り一帯を包み込んだ。
「あっ」
少女は声を上げた。
「どうした?」
ムリドは言った。
「う、ううん。なんでもない」
少女は目をそらして答えた。
「くそう。何て奴だ」
リーマーは言った。
リーマーは今まで蟻の大きさまで小さくなったことは無かった。
しかし、体が小さくなることでデスの攻撃を耐えることができたのだ。
「今は、今はまだそのときじゃない。今は小さいがいずれ! いずれ!」
自己正当化の言葉を並べることに精一杯だったリーマーには目の前の存在を認識する余裕など無かった。
「ナー」
クドーは鳴いた。
「あれ? リーマーは?」
ローズは言った。
「そこは覚えてるのね」
デスは言った。
「頭がッ! なんか嫌な夢をみていたような」
ギルは言った。その顔はローズたち同様青白かった。
「それ以上は思い出さないほうがいいわよ」
「何ででヤンス?」
クッスは言った。
「さあ?」
「ひどいや! デスさん」
スロスは言った。
「まあ、なんとでも言ったら? ただ、リーマーを倒したのは私よ!」
「え? 本当?」
ローズは言った。
「本当だ」
ムリドは答えた。
「あ、ありがとう」
「べ、別に当たり前のことよ」
「じゃあ、みんなは」
「ええ、すぐには目を覚まさないでしょう。けど、いずれ目を覚ますと思うわ。それよりも」
デスはムリドの後ろに隠れていた少女に視線を移した。
「怪しいわ!」
「俺か!? 何でだ? 口撃魔法がろくに使えなかったからか?」
ムリドは言った。
「あ、そうだった」
ローズは言った。
本来今回のスロスの一件も目的はローズの口撃魔法の使用によるパワーアップだ。
それがデスの降臨でリーマーを目指すことになり、そのうえデスがリーマーを倒してしまったのだ。
「違うわ! あんたの後ろの女よ!」
「え!」
ムリドは振り向いた。
「誰もいないじゃないか」
「もっと下よ」
「下?」
ムリドの視線もそうしてようやく少女に向いた。
今、ローズたちの視線は少女に集中していた。
「リムがどうかしたのか?」
「リムって言うのね。あんたはおかしいと思わないの?」
「俺は別に……」
「これだから……リーマーは言ったじゃない。『このヒトの世で寝てないのはお前らだけだぞ』って」
「ああ! 言ってたな」
「そこは覚えてるのにどうして……?」
「つまりどういうことだ?」
「リムは」
デスが言い終わる前にリムはムリドを押して勢いをつけてから走り出した。
不意打ちだったからかさすがのムリドも尻もちをついた。
「待って!」
ローズは言い、追いかけようとしたが、デスが腕を引いた。
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