第15話 石像は動き出す

「クドーの相手させていたらいいってわけじゃないのよ!」

「すいません。デスさん」

「なんかその名前嫌なんだけど、まあ、いいわ。で、これどういう状況?」

「それはあなたが自分で名乗ったから」という言葉をローズは抑え込みデスに現在の状況を説明した。



 事は数分前に遡る。

 クドーを無害化したのちローズたちはスロスの体を治すことを目的にした。

「毒と別々になぁれ」

 とローズがいつものように言った。まではよかった。

 しかし、

「オイ! 毒が空中に!」

 ギルは言った。

 スロスから分離した毒は空中に浮遊したままの状態となった。

「これは危険だ!」

 ムリドは言った。

「えぇ!? で、でも」

 ローズは言った。

「何かできないのか!」

「え、えいっ!」

 ローズが思いっきり手を右に振ると毒もまた右へと動いた。岩壁にぶつかるとごっそりと岩壁ごと蒸発してしまった。

「よく無事だったなスロス」

 ギルは言った。

「どうしたの? ギルくん」

 スロスは言った。

「それより、ギル。あの先って……?」

 クッスは言った。

「あ? あ、あぁ!」

 ギルは言った。

「な、何?」

「女神像が!」

 ギルは言葉とともに飛び出していった。

 ローズたちは彼を追いかけた。

「な、なんじゃ!? こりゃ……」

 ムリドは言った。

 そこで彼らが目にしたものとは?



「私はデス。女神よ」



「私だったわけね」

 デスは言った。

「女神像がヒトになるなんて」

 ギルは言った。

「私は女神よ! そこに変わりはないわ!」

「そうじゃないよ」

「メソメソしているなら私を動けるようにしてくれたお礼。しないわよ」

「俺はメソメソなんてしてないぜ!」

「そう。そうみたいね」

「それでいいんだ」

 ローズは言った。

「あなたたち、探しているものがあるみたいじゃない」

「どうしてそれを!?」

 ムリドは言った。

「可憐でかつ言語化することが難しい見た目の美しさを持つデス様よ!」

 しかし、どこか残念な感じがローズにはしていた。

「だいたいヒトは探してるものあるから」

「私のはそんなインチキじゃないわ。静けさの理由でしょ?」

「ほ、本物のだぞ!?」

「大丈夫? ムリド?」

「俺はだ、大丈夫だ!」

「静けさの理由を探しているってことも聞いてただけかもしれないでしょ?」

「う、そうか……」

「うぅ……」

 デスは言った。

「オイ、どうした?」

 ギルは言った。

「どうして、どうして信じてくれないの? どうしたら信じてくれるの?」

 デスはそう言って泣き始めてしまった。

「オイ! ローズ、言い過ぎだったんじゃ……」

 ムリドは言った。

「そうだ。一応、会話は初めてなんだし……」

 ギルは言った。

「そ、そうでヤンス!」

 クッスは言った。

「うぅ、グスン……」

「え、えぇ」

 ローズは困惑の表情を浮かべた。がやがて、

「ごめんって、ね? 言い過ぎたよ」

 と言った。

「よし! これでいいな!」

 ムリドは言った。

「よい! 案内してやろう!」

 デスは途端に泣いていたことなど無かったように顔を上げアジトから出ていった。

「何あれ?」

 ローズは言った。



「コッチだな!」

 ムリドは言った。

「逆って言ってるでしょ!」

 デスは言った。

 ローズがアジトから出たときには2人が何やら揉めていた。

「何なに、私のあとはムリドと?」

 ローズは言った。

「私は悪くないわ。ムリドが逆を行こうとするの」

「俺だって精一杯やってるぞ!」

「足手まといよ。ギルはそう思わないの?」

「思わない」

 ギルは言った。

「ムリド、俺についてこい!」

「オウ! そっちのほうがわかりやすいぜ!」

「わけわかんない。ローズはいいの? こんなので」

「いいに決まってるじゃないか」

 ローズは言った。

「彼らはわたしを守ってくれる強い仲間たちだ」

「ふーん」

 それ以降デスは黙って案内を始めた。

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