第14話 敵はいったい……?

「気をつけろ! 確かにここには強力な……気配が……」

 ムリドが突然大声を出したが声はフェードアウトしていった。

「どうしたの?」

 ローズが言った。

「いや、なに、思っていたやつと違ったものでな」

「違った!? 嘘だろ? アイツは! アイツはスロスを!」

 ギルは言った。

「事実だ。アイツにこの世に静寂をもたらすほどの力はない。一つ聞きたい。そのスロスという友がやられたとき大きな音がしなかったか?」

「それはもう! 耳がおかしくなるほどのな!」

「やはり、アイツはクドーだ」

 クドーと言われ、ムリドの指差す先にいたのは頭だけの猫のような、そこから尻尾が生えたような、どちらかといえば愛玩動物の類に似た見た目をしていた。

「か、可愛い」

 ローズは言った。

「油断はするな! 静寂をもたらすほどの力はない! が、ヒトの相手は難なくこなせる」

 ムリドの言葉が事実であることを示すようにクドーはヒトの上、恐らくスロスの上に乗っかっていた。

「アイツ! いつまでもスロスの上に乗りやがって!」

 ギルは叫び飛び出そうとした。

 ムリドはギルの肩を掴み静止した。

「何するんだ! 結局アンタはクドーってのの仲間か!」

「違う! 今は俺でもどうにもできん!」

 ムリドは苦悶の表情を浮かべた。

「……ローズ、頼む」

「わかった」

 ローズは言った。

 ローズはギルたちの会話を聞きつつクドーに照準を合わせていた。

 一刻も早くスロスを治してあげたい。文字が見えている以上きっと何とかなるはずだとローズは考えていた。

「ペットになぁれ!」

 クドーの体を言葉が通過した。



 クドーの体は光に包まれて、解放されたがしかし、見た目に変化は見られなかった。

 光が終わると頭から生えた短い4本の足を動かしてローズたちを目指して歩き始めた。

「効いてないのか!?」

 ギルが言った。

「いや、わからん! が警戒しろ!」

 ムリドは言った。

 ローズはムリドの言葉を無視し、クドーに向かって歩き出した。

 ローズには口撃魔法の自信が付き始めていた。

「オ、オイ!」

「ミャーオ」

 クドーはローズに顎を撫でられるとまるで猫のように鳴いた。



「やはり、俺の知っている限りでは、ミャーオ、なんて鳴くのはクドーだ」

 ムリドは言った。

「クドー、ヨシヨシー」

 ローズは言った。

「ミャーオ、ミャーオ」

 クドーは鳴いた。

「さっきから遊びっぱなしじゃないか」

 ギルが言った。

「……そうでヤンスね」

 クッスは言った。

「まあ、僕は元気になったからいいんだよ」

 スロスは言った。

「ありがとう。ギルくん」

「お礼はローズに言えよ」

「ありがとう。ローズさん」

「ヨシヨ、オホン。いいんだよスロスくん。さて、どうしたものか」

 ローズは言った。



「大丈夫でしたか!」

 ドアイラトは言った。

「う、うん。別に何もされてないよ」

「1人増えてるじゃな……何かいるー!」

「あぁ、コイツはな!」

 ムリドは言った。

「クドーじゃないですか! やっぱり行けばよかった〜」

 今、ローズはクドーを無害化したことで安全が確保でき、スロスの体も元気になったことでアルデンテスとの約束どおり連絡をしていた。

「いやー、ヒトの技術はすごいですね」

「これは古いやつだけどね」

 ローズは言った。

 ローズたちはテレビ電話でドアイラトたちと連絡をとっているのだ。

「これよりすごいのが?」

「まあ、ただの学生には手が出ないものなら」

「なるほど、奥が深いですねぇ」

「そろそろ本題に入ろうか」

 アルデンテスは言った。

「はい」

「それで、スロスくん」

「はい」

「君は自らの肉体に居るのかい?」

「はい?」

「あ、おーと」

 ローズは自分の体がスライスであることを説明をした。

「そうだったのか!」

 ムリドは言った。

「やはりな! そんな気はしてたぜ! ただものじゃないってな!」

 ギルは言った。

「そりゃあもう。ギルが認めたんでヤンスもん」

 クッスは言った。

「すごいやローズさん」

 スロスは言った。

「それほどでも」

「今はそんなときじゃ無いと思うんだが」

「すいません」

「つまり、無事に仲間が2人増えたわけだ」

「いえ、3人です」

 その時、

「ちょっと! そんなことしてないで説明しなさいよ!」

 新しい声がその場に響いた。

「すいません。また、落ち着いたら」

 ローズは言って、アルデンテスとのテレビ電話を切った。

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