第12話 ユリと闇の中/力を取り戻す

 うごめく闇の中は天空の城。

 その中には人が住むには十分すぎるほどの広さのスペースがあった。

「おかえりなさいませ」

 ユリの従者のチャスチャが言った。

「ただいま」

 ユリは言った。

「どうでしたか?」

「1人にさせて」

「わかりました」



「ああ! やってしまった! やってしまった!」

 ユリは与えられたベッドの布を引裂き感情を暴発させていた。

「ローズは、ローズはいい子なのに! いい子なのに!」

 部屋にある目に入る物を次々と壁に向かって投げた。

「ああ! あぁぁぁぁ!…………」

 ユリは頭を抱えてフラフラとした足取りでベッドへと戻った。

「もう、パパとママは離さない。それだけでいい」



「どうするんだい? これで今回の元凶はだいたいわかったってとこじゃないかい?」

 アルデンテスは言った。

「……えぇ、認めたくないけど」

 ローズは言った。

「当日の状況を教えてくれないかい?」

 ローズは皆に紫に輝く球をユリが投げたときのことを話した。

「そうか、お嬢ちゃんが置いたわけではないんだね?」

「……はい」

「でも」

 モンクは言った。

「本当にユリさんが悪いんですか?」

「ああ! 悪いさ!」

 アルデンテスの見た目の男が言った。

「俺はアイツの指示に逆らえなかった。体の自由さえ無かったんだ。俺は譲ちゃんに感謝してるぜ」

「……そう、ですか…………わかりました。ユリをどうにかする! それが私たちの課題ですね」

 ローズは言った。

「そのようだね」

 アルデンテスは言った。

「俺もお供させてください!」

 アルデンテスの見た目の男は言った。

「俺はアイツに反抗したい。が、見た目が変わり力が無くなり、前の体でも勝てるイメージがわかなかった。だから俺を仲間に入れてくれ!」

「どうするんだい?」

「私はいいですよ」

 ローズは言った。

「本当か!」

「アタシもムリドさんを入れてもいいです」

 ドアイラトは言った。

「ありがとう! ドアイラト!」

「やめてください。暑いです」

「すまない……」

「ワタシもいいですよ」

 モンクは言った。

「ありがとう! ……メガネ!」

「メガネはやめてください。モンクです」

「ありがとう! モンク!」

 ギルもクッスもアルデンテスもムリドを仲間と認めた。

「僕はここまでかな」

 サクラはいった。

「何で……?」

 ローズは尋ねた。

「ドアイラトまでは受け入れられたけどムリドは無理かな……。ちょっと状況についていけてない気がして、別になにかあったら頼ってもらってもいいけど」

「そっか、ありがとう」

「じゃ、ここで。またね。学校に忘れ物があったんだけど大丈夫かな?」

「探してみたら?」

「うーん、辞めとく! ま、またあとで、会えたら!」

「うん! また!」

 サクラは去っていった。



「申し訳ない。俺のせいで」

 ムリドは言った。

「ううん。サクラは大丈夫だよ」

 ローズは答えた。

「そう言ってもらえるとありがたい」

「じゃあ、準備はいいかな?」

「もちろんだ!」

「ちょっと待ってもらえるかな?」

 アルデンテスが言った。

「どうしたの?」

「その、見た目は変わるかな?」

「ああ」

 アルデンテス以外が同時に声を上げた。

 ムリドの見た目は未だアルデンテスのまま、その上ローズの「自由になぁれ!」で負傷した見た目が治ったために声以外で見分けることができない状態だった。

「俺としてももう自分の意思で変えられないだけに変えてもらえるなら変えてもらいたい」

「わかった」

 ローズの目に映っていた文字が変わったのを見てローズは息を吸った。

「勇ましくなぁれ!」

 ムリドの体を言葉が通過するとムリドの体が白く光った。

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