第4話 復活
突然の浮遊感が体に訪れた。
「あぁ、これが死か」ローズは直感的に悟り、口にした。
「違うよ」
見えるはずもなく聞こえるはずもないのに音はローズのもとへと届いた。その声は、
「アルデンテス!」
「呼び捨てかい? ひどいじゃないか! オレはそんなに悪いことをしてきた覚えはないんだが……」
少ししょんぼりした様子でアルデンテスは言った。それだけでなく、ローズの声はアルデンテスに届いたようだった。
「あなたのせいで、あなたの持っていた物のせいで世界もユリも大変なことになってるんです! その責任をとってください!」
「責任をとれって言われてもオレは実際に行動を起こした訳じゃないだろう?」
「そうですけど……」
「それに、オレは物を渡したはずだろう? 解決するための物を、使わなかったのかい?」
「……それは」
「オレを信じられず使わなかったんじゃないかい?」
「…………はい……」
「だろう? オレがヒャクパーセント悪い訳じゃあないんじゃないかい? よくてお嬢ちゃんたちとの共犯ってとこじゃないかい?」
「…………そうかもしれません」
ローズは自分が身勝手に他人に責任を押し付けようとしていたことを自覚した。
「まあ、ここまで言っておいてなんだが別に責任の追求に来たわけではないんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、君の体はご覧のとおり毒に侵されているっぽい」
「ご覧のとおりって」
ローズはアルデンテスが指差す方を見て目を見張った。自分の体が透けているだけでなく、その下に実体のある自分の体が紫に染まっていたからだ。
「な、どういうことですか!」
「これに関してはオレも本当にわからないが、ここにやってきたときには君は今の状態だった」
そのアルデンテスの説明でローズはドアイラトに胸を突き刺されたことを思い出していた。反射的に胸に触れようとするが手と体は交わるだけで触っている感覚はなかった。
「そう言えば! モンクは?」
「もんく? いや知らないな」
ローズはドアイラトのことを思い出すと同時に校庭を見渡したがモンクの姿はなかった。
「モンクなら一段落すれば何かわかるかもしれないんです」
「よし! じゃあ、探してきてくれ!」
「はい! じゃないですよ! 私こんな体ですし」
「オレだってモンクが誰だかわからないし」
「わーかーりーまーしーた。連れてきますよ! その代わり何もしないでくださいよ?」
「何に?」
「私の体にです!」
「ああ、大丈夫大丈夫! 任せとけ!」
ここでもまたローズはアルデンテスに対して疑心暗鬼に陥ったが前回は自分が変に疑ったことで事態が悪化したように感じられたことを思い出しそれ以上何も言わず学校をあとにした。
モンクの居場所はローズにもわからなかった。
勘で探し出すのは困難だがローズはそれ以外の方法を思いつかなかった。
しかし、走って行った方向はわかる。それにモンクには悪いが体力がありそうには見えなかった。
道中自分の体が自分の体以外の物もすり抜けるのか試してみた。結果は案の定すり抜けられた。
飛んでいるドアイラトがいないか空を見渡してみたがうごめく何かが未だほとんどは雲の近くから動いていないように見えるだけでドアイラトは見つけられなかった。
「おーい。モンクー」
と時折聞こえるかどうかもわからない声を出してみたが、
「何してんの?」
という別人の間抜けた声しか聞こえなかった。
「サクラ?」
それは友人のサクラだった。
「なんかよくないこと思われた気がするけど、それより、どうしたのそんなに透けちゃって」
「いやいや、そんなことよりも、あ、危ないからあんまり外に出ないほうが」
「へーきだって、もう危険だから」
「ギャアアア」
サクラが後方を親指で指すのと叫び声が響いてくるのはほとんど同時だった。
そして、叫んでいるのは、
「何で、ワタシ? 何で? 何で?」
幸か不幸かモンクだった。
「お前は見られたから生かしておけん!」
「イヤァーーー!」
ローズはサクラとモンクにつられて走り出していた。
「何でサクラはそんなに余裕そうなの?」
「あんな遅いのに追いつかれるわけないから」
「ワタシはもう結構な間追いかけられて疲れているんです!」
モンクは言った。
「そうなの?」
サクラは驚いたように言った。
「そうなんです!」
モンクとサクラとのやり取りの中ですきを見てどうせ倒せないならとローズはサクラに囁いた。
「ねぇ、学校まで誘導できる?」
「もちろん!」
返事はシンプルだった。
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