第7話 お堅い私 1

 激しい頭痛と共に目を開ける。いつもより天井が高く感じた。まだ気分が悪かったからもう一度目を瞑ろうと寝返りを打つ。

「…え。」

 目の前に浩介くんの美しい寝顔があったのだ。ん…とモゾモゾと動く彼が起きないように、布団から身体を出す。服は着ていた。ふわりと布団を持ち上げると、浩介くんは服を着ていなかった。

「ぎゃっ!」

私が驚きの声を上げると同時に、浩介くんの目が開いた。

「美和…おはよ…」

 浩介くんは特にこの状況に驚いてはいないらしい。

「あの、私…」

 恐る恐るこの状況の説明を求めた。壁に背をつけて少しの安心感を得る。相変わらず凄く綺麗な浩介くん、緩いカーブを描いた鼻筋、自然に膨らむ涙袋に丸く開いた瞳。何も敵わない。彼はゆっくりと布団の中から私の方に近づいてくる。

「ん?知りたい?」

 凄く悪戯っぽく笑う顔に無条件にキュンとする。目を合わせていられなくなって、自分の目が泳ぐのがわかる。

ピンポーン…

 ふぅ、とため息を軽くついた浩介くんは、

「多分荷物だから出てもらってもいい?俺、これだから。」

と言って、布団を持ち上げようとする。

「あー!大丈夫だから!開けるから!」

 私は玄関に向かって走った。扉を軽く開ける。

「…おは…」

 異常にゆっくり開く扉に違和感を覚えたのか相手の朝の挨拶が止まる。どこか聞き覚えのある声だ。続けてゆっくりと扉を開けるとそこにいたのは。

「輝樹おはよ。」

 いつの間にかバスローブを着た浩介くんが後ろに立っていた。

「え、なんで…」

 輝樹も驚いたとように動きが止まっている。私の後ろから程よく筋肉のついた浩介くんの腕が輝樹に伸び、部屋に招き入れる。パタンと閉じた玄関には異様な雰囲気が流れた。

「とりあえず入りなよ。」

浩介くんは相変わらず悪戯っ子のような笑顔を浮かべながら私たちを室内に案内した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

理想的偶像 みみず @mimizu1105

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ