第6話 狭い世界 3
「…久しぶり、浩介くん。」
少し戸惑いつつ挨拶をする。私はずっと連絡を取っていなかったから、高校卒業の18歳以来、4、5年ぶりの再会だった。
「小嶋浩介とも知り合いなわけ?!」
小声で先輩が聞いてくる。細かく頷く事しかできなかった。
「輝樹にはよく会ってるけど、お前らもう別れちゃったんだろ?」
話をしながら、さりげなく隣に腰を下ろす浩介くん。
「ま、まぁ。」
昔からかなグイグイくる感じが苦手だったな…と思い出す。いい思い出はあまりない。なんとなく浩介くんが芸能界という知らない世界に輝樹を連れて行ってしまったと思っているからかもしれない。私と輝樹が完全に別れてしまったのも結局、人気なモデルになって行く彼とうまくいかなくなったからだ。そのモデルへの道のレールを引いたのは浩介くんだった。
そんなのは無理やりな当て付けだと頭では分かっていたが、もう会うことはないだろう浩介くんのせいにする事で少し頭の中で整理をつけている部分があった。
「輝樹と会ったりしてないの?」
よく会ってるけど、私の話はしない事が開始数秒で分かった。特に漁られたくなかったのではぐらかすように頷いた。
「そんなに警戒しないでよ。」
いつの間にか出ていたお酒を傾けながらそういう浩介くんの横顔は相変わらず美しかった。気を紛らわそうと目の前にあるカクテルを一気に飲み干した。
ところまでは覚えている。
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