第196話 一行怪談196

 友人に電話したところ留守番電話につながったが、ピーという音があの時山に埋めた彼女の断末魔に変わっていた。


 誰もいない廃墟から毎日のように携帯の着信音が聞こえるが、三年前に解約した母の携帯の着信音と同じように聞こえる。


 電話で話す時だけ、母の声はしゃがれた男の声に変わっている。


 携帯の着信音が設定していない読経に変わった日は、親戚の誰かが亡くなったという連絡が入る。


 父がここ数時間、誰かと長電話をしているのだが、電話の相手の声がだんだんと大きくなっており、その声は去年亡くなった祖父の声にそっくりだ。


 見知らぬ電話番号から着信が来たのだが、番号にはなぜか「理」という文字が紛れている。


 最近仲良くなった近所の人の鼻歌は、私の携帯の着信音と似ている。


 深夜に突然かかってきた電話に渋々出てみると、「ああ、出ちゃったか」という知らない子どものガッカリした声の後に、電話は切れてしまった。


 ここ数日かかってきた無言電話に出て、電話の主に文句を言った恋人の利き手が、いつの間にか逆になっている。


 夕方四時にかかってきた電話から、「死なないで」という女の声が聞こえた時は、急いで携帯を壊してください。

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