第195話 一行怪談195

 スマホを操作しながらこのエスカレーターに乗ってしまった際、スマホの画面に映った文章を全て読み上げると助かる確率は上がりますが、画面に文章がなかった場合は諦めてください。


 下りのエスカレーターには乗っている人間がいないと気づいた時、先が真っ暗で見えないこの上りのエスカレーターはどこに続いているのか、急に恐ろしくなった。


 私の前にエスカレーターに乗っている男が、首を百八十度曲げた状態で私を見つめ、ニヤニヤと笑っているので気味が悪い。


 腕時計を見ようと俯いた時、私の顔を覗き込む逆さまの顔の少女と目が合い驚いて顔を上げると、少女の顔は天井から伸びていた。


 エスカレーターがたまに逆走することがありますが、その時は流れに逆らって何としてもエスカレーターの向きとは逆方向へと逃げてください。


 上りのエスカレーターが途中で止まった途端、乗っていた周りの人間は慌てた様子でエスカレーターを駆け上がっていき、皆の様子に呆気に取られていると、後ろから獣のうめき声のようなものがいくつも折り重なって聞こえてきた。


 すれ違う下りのエスカレーターに乗っている人間の中に、全く同じ顔、同じ背丈、同じ服装の女が、こちらを睨み付けながら手招きしているのを見かける。


 すれ違う上りのエスカレーターに、なぜか腐った人間の頭らしきものが人間に混ざって乗っている。


 上りと下りのエスカレーターがすれ違う一瞬だけ、乗っている人間が全て消えてしまうことがありますが、それが起こる確率は十パーセントも満たないので、安心してご利用ください。


 下りのエスカレーターの先は、大きく大きく開かれた口が待っている。

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