第194話 一行怪談194

 この数回、乗ろうとしていたエレベーターの中が満員でさすがにイライラしていたが、その中に去年死んだ同僚がいたことに気づいた時、目の前にエレベーターが到着した。


 中に誰もいないエレベーターに乗り込んだ時、ブーという重量オーバーを知らせるブザーが鳴り響いた。


 停電のせいか一瞬暗くなったエレベーター内には、私をじっと睨む十人ほどの人間たちがいたが、ここには私一人しか乗っていないはずだ。


 エレベーターで通りすぎる階には必ず、こちらに手を振る少年がいた。


 四階を通りすぎてからエレベーターの階数表示が変わらず、故障したのかとうんざりしていると、突然エレベーターの扉が開き、そこに広がる真っ暗な空間に唖然とする間もなく、「死階です」というアナウンスの後にいきなり後ろからその空間へと突き飛ばされた。


 そのエレベーターに乗った人間は必ず足しか帰ってこないので、マンションの住人はどの階数に住む人も全員階段を使う。


 私がエレベーターを使う時には必ず、野球帽を被った男が中に乗っていたことを思い出した時、玄関のチャイムが鳴らされた。


 町のデパートのエレベーターを使う際には、エレベーターから降りる時に三分間叫び続けないと、何か連れていかれるらしいという噂が飛び交い、今ではそのエレベーターを使う全ての人間が降りる時に叫んでいるが、その噂が出回るようになってから、町での失踪事件が多発しているという。


 やってきたエレベーターに赤いヒールが片方だけ乗っていたら階段を使うこと、ヒールが両方乗っていた場合は諦めてその場に留まること。


 エレベーターの隅に盛り塩があった場合は必ず崩してください、死にたくない方は必ずお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る