第197話 一行怪談197
暗くなったパソコンのディスプレイには、私の背後に浮かぶ赤ん坊の手が、ここ数日の間に映るようになった。
私のパソコンのキーボードには、エンターキーの隣に「実現」というキーがあるのだが、ある日、「上司が死ねばいいのに」という悪口を書いていた時に間違えてその「実現」のキーを押してしまった。
ひとしきりネット掲示板で利用者と盛り上がった後に、このパソコンがネットに繋がっていないことに気づいた。
エンターキーを押すたび、周りにいた同僚や上司、後輩までもが次々と消えていく。
家のパソコンで文章を書いていると、句読点の間に「獄」という字が紛れる。
会社のパソコンは電源を切る前に、「今日もお疲れさまでした」とパソコンに声をかけないと、今日作ったデータがすべて消えてしまう。
父が使うパソコンで動画を見ると、動画の片隅に必ず鬼の面を被った子どもが見切れている。
母が私のパソコンを使う時だけ、祖父母の結婚式の写真が使われたディスプレイ広告が現れる。
パソコンの電源を入れた時、ディスプレイに白目をむいた男の顔が一瞬だけ浮かび上がった。
最新型のパソコンが、二十年間鍵を掛けられていた家の倉庫から見つかった。
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