第174話 一行怪談174
進化の末にゴキブリは人間の姿に擬態できるようになり、巷では四肢が千切れても、頭が潰れても、平然としている人間の姿がよく目撃されるらしい。
「私たちの子がかわいくて仕方ない」と、口から吐き出したゴキブリを指で撫でながら妻が笑う。
体に害のあるものは使っていないのに、義母が作った料理の残飯を食べたゴキブリは、数秒後に必ず息絶える。
ゴキブリの卵を台所で発見し、すぐさま駆除してからというもの、台所に足を踏み入れるたびに頭の中で無数の呪詛の声が響く。
ゴキブリホイホイを部屋に仕掛けた翌日、中を見てみると、折り紙で作られたゴキブリが数匹入っていた。
ゴキブリの生命力を目を付けた各国の政府が、人間の受精卵にゴキブリの遺伝子を組み込む実験を、各国共同で密かに行っているらしい。
ゴキブリの苦手な友人に理由を聞くと、「あいつら、人の食ったもん勝手に食うから」としかめ面の友人のへそから、ゴキブリがのっそりと出てきた。
生後間もない息子の泣き声が聞こえなくなったのでベビーベッドを覗くと、両手で掴んだゴキブリを舐めしゃぶっている息子と目が合った。
「この感触がたまらないんだよ」と話す友人は、自身の体の上に無数のゴキブリの死骸を乗せて眠るのが日課になっている。
ニコニコと笑う娘の得意料理は、ゴキブリの体をちぎった物を入れた特製カレー。
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