第173話 一行怪談173

「『復讐からは何も生まれない』と言うけど、復讐心から知恵を身につけて、絶対に見つからない方法を生み出すこともあるのよ」と薄く笑う友人だが、友人の夫とその不倫相手は数週間前に突然姿を消している。


 友人が私の夫と関係を持っていることを他の友人に自慢しているそうだが、友人の夫の子を私が腹に宿していると知れば、彼女はどんな反応をするだろうか。


 私につきまとっていた男は前世の私の婚約者だと気づいた時には彼は遺体で発見され、呆然とする私を抱きしめた、「安心して、君は僕が守るから」と笑う、現世の私の婚約者もとい前世の私のストーカー。


「さっさと泣き止ませろよ」とウンザリした顔の夫の前で我が子の首をかき切った時の、驚いた夫の顔の面白いこと。


「ここに犯人はいません」と探偵が嘘をついた理由は温情からではなく、後でその犯人に口止め料をせびるため。


「この村にはお前が必要なんだ」と泣きついた両親の顔を思い浮かべ、あの時急いで逃げるべきだったと、故郷の山に彫られた穴に落とされた私に土をかける連中を見上げ、激しい悔いしか残らない。


 テレビに映る殺人犯は、昨日、私が被害者宅となった家までの道案内をした人物。


「あなたは強い子だから」と私を暴力的な父親の下に置いて家を出た母と街中で再会し、やっとこの日が来たと隠し持っていた包丁を母の腹に突き刺した。


 妹の婚約者として私の前に現れた男は、五年前に私を夜道で襲った男で、恐怖で動けない私に「また会いましたね」と男は微笑んだ。


 仲直りの証として義母からもらったぬいぐるみの腹をこっそり割いてみると、中から「死ね」と隙間なく一面に書かれた無数の紙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

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