第157話 一行怪談157

 逆恨みが原因で隣人に殺されたという曰くがある廃墟だが、夜になると一家団欒の仲睦まじい話し声は止まず、件の隣人の死刑が執行された日から、話し声はより一層大きくなってしまい、今ではその近所では引っ越す人が絶えないのだそうだ。


「体中を虫が這いずっている」と喚きながら全身を掻き毟っていた隣人がミイラのように干からびた状態で発見された翌朝、顔を洗った後に鏡を見ると目の中で何か白い紐のようなものが泳いだのが見えたかと思うと、途端に全身がむず痒くなり、痒い痒い痒い、虫が虫が、体の中を虫が、痒い痒い痒い……。


 毎年この時期になると、実家に飾ってある家族写真の祖父の顔が崩れていき、その顔が徐々に戻っていくにつれて、親戚のうちの誰かが顔か頭に大怪我をする。


 観覧車をもう十周しているが、もうすぐ十一週目になろうかというのにここから出される気配はなく、下に待機していた従業員の姿もいつの間にかいなくなっていることに気づいた瞬間、頂上に大きく口を開けた真っ黒な人影が見えた。


 全く同じDNAを持つ遺体はこれで五体目だが、全員顔も年齢も体つきも性別すらも異なっている。


 フリーマーケットに出店している店の一つに、繊細な装飾が施された生爪を使ったアクセサリーを売っている店がある。


 鏡に映る私の顔は顎から上が抉れてしまっているので、自分の化粧が崩れているのか分からなくて非常に不便だ。


 水たまりに反射している妹の体からは、腕が四本、足が三本、頭が前後に二つという出で立ちだった。


 何の気なしにビーチサンダルを履いて外に出かけたところ、ハッと我に返った時には私は水底へと沈んでいた。


 入り組んだ道の果てにたどり着いた先は行き止まりで、後ろを振り返ると先ほどまであった道の代わりに壁があり、足元を見るとそこにはいくつもの骸骨が転がっていて、私は自分の運命を悟った。

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