第156話 一行怪談156
近所のファミレスに立ち寄ろうと思ったが、ファミレスの窓に人が殺到して近付こうとする私をぎらぎらと輝く目で見つめてくるため、慌てて踵を返した翌日、新聞に件のファミレスが火事で全焼し、店内にいた人たちが全員死亡したという記事が載っており、火事があったのは私が立ち寄ろうとした一時間前のことだった。
街頭で照らされた光の下で、10cmほどのバレリーナがくるくると回っているが、その顔が去年死んだ姪のものだと気づいてしまった。
登山に行ったきり帰って来ない叔父から十年ぶりに手紙が来て、その手紙には「運命の人に出会った」という旨の内容が書かれており、同封されていた写真には笑顔の叔父と花嫁衣装を着た猿が写っていた。
コンビニでアイスを買って食べたところ、アイスの棒には「当たり」という字が書かれているのを見つけた直後、突如両肩がいきなり重くなり、半透明の人々がぐるりと俺を取り囲んだ。
子どもを連れて動物園に向かったのだが、眠っている動物の背中にチャックがついていることに気づいてしまった。
トイレに駆け込んだ兄が一時間経っても出てこないので、心配になってトイレの中を覗いてみると、兄の頭がプカリと便器の中に浮かんでいた。
ネットの掲示板に家族の悪口を書いてからというもの、家族の声が一切聞こえなくなってしまい、数年経った今では、家族の声が思い出せなくなった。
鏡に映る甥の背中には、去年死んだ甥の母親がもたれかかっており、甥に近付こうとする異性を睨み続けている。
帰り道、私の前を歩く見知らぬ老人は、当たり前のように私の家の玄関をすり抜けていってしまった。
濡れたバスタオルを室内で干していると、バスタオルからあの日の友人の腐った肉の匂いが漂ってきた。
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