第158話 一行怪談158
毎日送られてくる汚れた小包に姉は異常に怯えているが、品行方正で周りからの評判も高い姉の秘密が周囲に知られる日は、そう遠くないだろう。
母校にある焼却炉の中は血に染まったように真っ赤らしい、という噂を聞いて確かめたくなり、夜中にこっそりと校内に侵入して焼却炉の中を覗いてみると、中は確かに弾力のあるぬるぬるとした肉のようなもので覆われて真っ赤だった。
礼服を着た見知らぬ壮年の男に、「ひょっとこに気を付けてください」と声をかけられてからというもの、街中や職場、家の中でも、買った覚えのないひょっとこの面を見かけるようになった気がする。
猛吹雪の中、こちらを手招く喪服を着た女を見かけた時は、決して女の顔を見ずに女に一礼してからその場を早く立ち去ること。
大雨の中、もしかごめかごめの童謡が傘の内側から聞こえてきたら、すぐにその傘を近くの神社か寺に置いていき、その日は決して家に帰ってはいけない。
天井裏から物音がするため、正体を確かめるために一時間ほど前に夫が屋根裏に上ったが、一向に屋根裏から夫が降りる気配はなく、それどころか妙に高い声で「何もないから早く来いよ」という夫の声がしきりに聞こえてくる。
突然電話の向こうの友人がけたたましく笑い始めたため、慌てて電話を切って別の友人に電話で事情を話すと、その友人も同じように笑い始めてしまい、もうこれで三人目になる。
帰宅するとご機嫌な様子で「あなたの大好きなものを料理してみたの」と妻が食卓に出したのは、愛人の指輪が飾られた大きなハンバーグ。
愛犬が拾ってきたぼろぼろの猫のぬいぐるみは、家に持って帰ってからまるで生きている猫のような動きを見せるも、愛犬がそのぬいぐるみをまるで子どものように可愛がるので、いっしょに暮らし始めてもう三年になる。
実家の蔵にある金魚鉢の中には、影だけの美しい金魚たちが数匹、今も優雅に泳いでいる。
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