第152話 一行怪談152

 悲鳴を上げながら田んぼに飲まれていく近所のガキ大将を見て、そろそろそんな季節になったかと、田んぼが飲み込みやすいようにとガキ大将に石を当てる。


 笑えない冗談をよく言う同僚が、あまり良くない噂を聞く上司に「人を殺してそうな顔してますね」とふざけたことを言うと、「よく分かったね」と微笑んだ上司にト飲みに誘われてから出社していないが、不快な気分にさせられる同僚の言葉を聞かなくていいと思った社の全員はそのことに言及せず、上司の評価も鰻登りだ。


 玉の輿を狙う侍女にそそのかされた王子が周りの反対を押し切り令嬢に婚約破棄を突きつけ、令嬢があっさりとそれを受け入れた数日後、国は隣国に攻め入られて陥落し、実は隣国の王家と親族だった令嬢との婚約が自国の安全を守っていたのだと、王子が全て理解したのは、王の次に侍女と共に処刑される直前のこと。


 難病の子どもを助けるために関係ない人を手にかけた母親だが、子どもの病気が治った途端に自身が手にかけた人々の怨霊に子どもが殺されそうになる事態が続き、半狂乱になりながらその怨霊を祓おうとインチキな霊感商法に金を費やしている。


 私は姉と兄の子どもだったのだということを両親だと思っていた人たちから知らされた時、「でも、私たちは血がつながっていないから」と両親だと思っていた人たちの腸を貪る、額から角の生えた兄を愛おしそうに抱きしめる姉の言葉に、「いや、今はそうやっていちゃついている場合じゃないだろ」とツッコみたい気持ちをグッと堪える。


 先ほどから前を走行しているトラックの後輪に人の腕のようなものが引っかかっているので、クラクションを鳴らしてトラックに知らせたところ、その腕はこちらへと伸びてきて、フロントガラスを叩き割った。


 なんとなく近所の野良猫の後をついていくと、猫は近所でも騒音で有名な老人の家の塀へと上り、慌てて近くの塀に身を隠すと、振り向いた猫の顔は家の主である老人の顔に変わっていた。


 ガチャガチャとドアノブを回す音が玄関からしたので見に行くと、着物を着た半透明の老人がドアノブを握り締めながら半泣きでこちらを見つめており、先祖は相変わらず鍵の開け方が分からないらしいと溜め息をつく。


 その部屋から出てきた祖母は若く美しい少女へと変わり、這いずって出てきたよぼよぼの老人は恐らく、かくれんぼの最中でこの部屋に入ってしまった親戚の子どもだろう。


 お笑い番組を見てある芸人のネタにツボった姉は、自身の葬儀の最中でも棺の中で笑い続けている。

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