第138話 一行怪談138

 最近テレビ番組で心霊番組が放送されなくなったのは、とある心霊写真に「これ以上我々のことを見世物にするなら容赦しない」という幽霊からの警告があったからだということは、あまり知られていない。


 この交差点では「青年を轢いた」という通報が相次いでいるのだが、事故があった痕跡は一切なく、そもそも死亡事故が起きた記録はない。


 空き地で遊ぶ子供たちの数が一人減っていることに気づいても、そのことを言ってはならないのはこの町でのルールだ。


 粗野な言動を咎められる兄だが、「俺がこうしないと呪われるのはお前たちなのに」と言う兄の後ろで黒い影が這いずったように見えた。


 運動不足気味の姉がダイエットを始めたのだが、体重が二桁を切っても姉の体型は変わらない。


 甥が私を見るたびに「なんで生きてるの?」と睨んでくるのだが、まさかあの時のあいつがこうして生まれ変わって私の前に現れるなんて、再び手を打たなければならない。


 妻が最近息子に冷たいのだが、理由を聞くと「あの子が私を見る目が怖い」と震える妻の後ろで、カッターナイフを持った息子がにやにやと笑っている。


 朝食でご飯を絶対食べない友人は、「前に寝ぼけてご飯だと思って蛆虫の大群を食べたからね」と苦笑いした。


「カコちゃん」と名乗る少女に道案内を頼まれた時は、「私はそこまで行けません」と少女が姿を消すまで頭を下げ続けなくてはならない。


 一mほどの大きさに膨らんだ弟の頭を面白半分でつつくと、ぷすっと音を立てて弟の頭はどんどん萎んでいく。

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