第137話 一行怪談137
先ほどから自撮りを試しているのだが、私の顔だけ認証されず、私の隣の空間だけ顔認証の表示が出ている。
カチャカチャとキーボードがひとりでに動き、パソコンの画面に「最近呂律が回っていませんよね?」という文章がびっしりと書き込まれている。
庭に干した洗濯物の中に、物干し竿にぶら下がった薄っぺらい女がケタケタと笑い声をあげている。
虐待事件があった物件に住んでいるのだが、夜中になるとうずくまった影だけの男女の姿と、彼らに暴力を振るう影だけの子どもの姿が壁に映る。
我が家に代々伝わっている梅酒は、家の人間以外が飲むと一週間以内に必ず大きな事故に遭って左目を失うのだそうだ。
動画の編集をしていると必ず、あの時山に埋めた彼女の声が混ざっている。
司会者の隣に立っている老人に一切触れないまま番組は終わり、後日その司会者が自身の父親を殺害した罪で逮捕された。
娘のお気に入りのぬいぐるみの顔が、私が殺めた夫の愛人の顔に似てきている。
心霊スポットに言った弟が帰って来ないので家族に通報しようと相談したところ、「お前に弟はいない」と怪訝な顔をされた。
そういえば今日、朝から何の音も聞こえない。
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