第135話 一行怪談135
「今日は朝から乳歯が降ります」という天気予報を聞き窓から空を眺めると、空からは明らかに大きく鋭い牙が降っているのだが、なるほど、確かに予報では何の乳歯かは言っていない。
娘が寝息を立てるたび、娘の頭が膨らんだり凹んだりしている。
何度電卓で計算しても、私の年齢は実年齢より十も若くなる。
ひそひそ声が聞こえる、テレビを見ている妻の腹の中から。
皆がアザラシだとカメラを向けているものが、私には腕を胴に縫い付けられ、足を縄でぐるぐる巻きにされた、泣き叫んでいる人間の赤子にしか見えない。
遺産のことで揉めている親戚の後ろで、祖父の遺影がカタカタと揺れ、心なしか祖父の顔が金の亡者だった曾祖父の顔に変わっていく。
靴箱に靴を一晩入れておくと翌日にはつま先の部分が食い千切られたようになくなるので、我が家の玄関は靴が溢れかえっている。
蚊帳の外に蚊が飛ぶ音を口から響かせながらうろうろと歩く女がいるので、外に出られない。
ぶつぶつと人が呟く声が、トイレの便器の奥から聞こえてくる。
夢の中で私の名前を呼ぶ男が、かつて私につきまとっていたストーカーだと気づいて目を覚ました時、「やっと気づいてくれたぁ」と私に覆いかぶさる男が笑った。
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