第134話 一行怪談134

 うちの炊飯器で米を炊くと、なぜか泥にまみれたご飯が炊きあがる。


「お前の娘を誘拐した」という男の電話があったが、その直後に男の悲鳴が電話越しに響き渡り、そもそも私に娘はいない。


 首に白蛇が巻き付く夢を見た翌日は、覚えのない会社から大金が口座に振り込まれている。


 いつも笑顔を絶やさない弟が唯一不機嫌になるのは、よく事故や事件に巻き込まれる兄が無傷で帰って来る時だ。


 チョコレート工場では隠し味として、生まれたばかりの赤子の血を混ぜている。


 フラスコの底にこびりついた彼女の血は、時折僕に対する愛の言葉を囁く。


 猫背の息子の姿勢が良くなったのは、息子の背中の皮膚に入り込むいくつもの虫を目撃した翌日から。


 アパートの大家さんはとてもいい人なのだが、その日によって顔が変わっているので、街中で大家さんに声をかけられると誰か分からないのが悩みだ。


 妹の腹が大きく鳴る時は、近くに手頃で絶品な子どもがいる時だ。


 近くのホームレスがいなくなる日の給食は、美味しい唐揚げが出てくるのでみんな喜んでいる。

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