第133話 一行怪談133

 ねんねんころり、ねんころり、寝ぬ子の首をチョンと切る。


 シャボン玉の群れが今日も、赤子の泣き声を響き渡らせながら、住宅街を駆け回っている。


 あるアーティストの最新曲を聞くと、サビの部分で女のか細い声のハモりが聞こえると噂になったが、その声を聞いたと言った者が実在していた証拠がない。


 ご馳走ということで母が鰻の蒲焼きを買ってきたが、父の肝臓があまり高く売れなかったのだろう。


 季節外れの雪兎が自宅の玄関の前に置かれてから一週間が経つが、雪兎は溶けるどころか一日に一体ずつ増え続けている。


 無口な妹がお喋りになったのは、お喋りな姉が死んだ翌日からで、いつの間にかその喋り方も姉に似てきている。


 雨に濡れる私に傘をくれた見知らぬサラリーマンは、「ここから家まで遠いですからお気を付けて」と会釈して去っていった。


 兄の後頭部にある顔が、笑ってはいけない状況に限って変顔をしてくるので何とかしたい。


 喪服を着た若い女が祖父の後ろでずっと佇んでいるのだが、その女が笑っている時に必ず祖父の体調が悪いことに気づいた。


「帰ります」という遺書を残してマンションの屋上から飛び降りる住人は、これで七人目。

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