第132話 一行怪談132

 弟の爪を切る時は注意しないと、爪の破片から新たな弟の複製が作られてしまう。


 兄に悪戯をして驚かせたところ、兄は口から心臓を吐き出して倒れてから動かない。


 指名手配犯のうちの一人の写真が、だんだんと私の顔に似てきた。


 私の夫がスーツを着ると、幼い妹を壁の中へ連れ去った記憶の中の男と重なって見える。


 海底から引き上げられた船の中には、泣き声をあげる幾人もの赤子が生きた状態で発見された。


 ビールの泡が口に張り付いて剥がれず、数時間後にはビールの泡から白いひげが生えてきた。


 外はこんなに日差しが強いのに、ベランダに積もった雪は凍ったままだ。


 冷凍庫の中に肉を入れると、必ず動物が泣き叫ぶ声が一日中響く。


 路上にしゃがみこむ子どもに声をかけると、子どもの背中が大きく開いて、長い舌が私を掴んだ。


 不死の祖父は今日も、真っ黒焦げになった肉塊の状態で呻いている。

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