第113話 一行怪談113

 アパートの右隣の隣人が夜中の騒音に苦情を言ってきたのだが、そもそも私の部屋は角部屋で右隣に部屋はない。


 ゴミ箱からカサカサと音がしたのだが、中を覗くと赤子の手首が蠢いていただけ。


 飛行機雲の先には、ケタケタと笑う老婆が飛んでいた。


 朝起きると、枕元に真新しい口紅が置かれ続けて一カ月。


 RPGをした後にリビングに向かうと、ゲームで見た斧が頭に刺さった小鬼が姉の服を着て座っていた。


 新しいヘッドフォンは長時間付けていると、べろりと内側から耳を舐められる。


 どのカレンダーをめくっても、6月18日から先がない。


 浴槽に浮かぶ柚子は、どれも「熱い、熱い」と苦悶の表情を浮かべる。


 ニコニコと笑う赤子の視線の先は、父に馬乗りになって何度も包丁を突き刺す母の姿。


 職場の電話を取る際は、必ずなくなった前社長の名を名乗らなければならない。

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