第106話 一行怪談106

 最近スマホの充電の減りが早いと思っていたが、夜中、私の枕元でスマホにしゃぶりつく裸の男と目が合った。


「アクセントに言いのよ」と笑った妻が、見知らぬ男の髄液を注射器で抜き、味噌汁の中に髄液を入れた。


「目玉貸します」という紙を見せる、右の眼窩がぽっかり空いた女。


 浮気を繰り返す恋人を殺した後に別の男と結婚し息子を産んだが、息子の顔が年々「僕たちはまた会えるから」と最期に言った恋人の顔になっていく。


 夫の連れ子は寝ている時にいつも、「早く逃げて」「母さんみたいになる」と寝言で私にそう囁く。


 天気予報で「今日は突然のにわか人間に気をつけてください」とキャスターが言った瞬間、窓の外で何かが叩きつけられた音が響いた。


 ある日を境に、口を開くと蛙を吐き出す兄。


 夜中二時になると赤い水滴を流す、母の手鏡。


 姉が触ると金切り声を上げる、姪のぬいぐるみ。


 腸を垂らしながら、いつも通り振る舞う弟。

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