第94話 一行怪談94
湯加減を確かめるために湯船に手を入れると、湯とは違う生温かいものにべろりと手を舐められた。
トイレにこもってゲームをしていると、「さっさと出んか」という呆れた声が便器の中から聞こえた。
近所の子どもたちの間で流行っているまじないがあるそうだが、あれは自分の指を一本捧げないと後でしっぺ返しが来ると、左手の小指がない私は心の中で同情する。
デザートには処女の生き血を固めたゼリーを作ろうと思うのだが、胎児のステーキの後には少ししつこいだろうか。
格闘ゲームを毎日半日以上もしている兄だが、一歩も外に出ていない兄の体になぜ打撲痕や傷痕が大量にあるのだろう。
不妊に悩んでいた姉夫婦がようやく授かった子が赤子の大きさほどの芋虫ということは、二人はあの禁術を使ったということなのだろうと、二人の行く末を案じる。
新しい彼女が出来たと弟にその彼女を紹介されたが、全身傷だらけで腕が有り得ない方に曲がったそれは、数カ月前に交通事故に遭って死んだ弟の前の彼女だった。
叔父の名前でかかってきたその電話に出てみると、彼が犯した罪について懺悔する叔父の泣きそうな声と、ケラケラと笑う子どもの声が聞こえるだけ。
隣の部屋から毎夜のようにギターをかき鳴らす音が聞こえてきて怒鳴り込んだのだが、部屋のドアを開けて出てきたのは顔が半分溶けて骨がむき出しになった人らしきもの。
不審死の遺体を解剖しても、猫の心臓に犬の肺、豚の腸に鯨の胃など、さまざまな動物の臓器がつなぎ合わされた状態で、警察は病死として処理した。
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