第68話 一行怪談68

 食べても食べても食べても食べても食べても食べても、腹がはち切れて中身が飛び出ても、腹が空いてたまらない。


 うちで沢庵が食卓に出される日は、家の人間に不快感を与えたものが惨殺される夜。


 外に出してある洗濯機が稼働しているので不思議に思い見に行くと、洗濯機から2mはありそうな腕がはみ出していたので、余分な水道代と電気代がかかると頭を抱えた。


 腹が減ったので冷蔵庫を覗くと、顔が歪に歪んだ小人が何十匹も冷蔵庫内の食料を食い荒らしていたので、とりあえず怒鳴った。


 かごめかごめを大人になった今やってみると、後ろの正面になった人物が子どもの姿に戻り、名前を呼ばれたものはしわくちゃの老人の姿になった。


 私が作った怪談話を披露した相手が、次々と行方知れずになる。


 娘が泣き笑いながら寝言を言うと、必ず近所の老人が風呂で溺れ死ぬ。


 記念日に妻からもらった花は、私が埋めた女の土から生えた花とそっくりだった。


 好き嫌いがない息子を褒めるべきだが、最近は近所の赤子を見て涎を垂らすので困る。


 友人にある幸運のおまじないを教えた翌日に彼は死んだので、「実行者にとって一番の幸福を与える」というおまじないの効果は本物だったと、蘇った死者に体を貪られる今になって思う。

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