第66話 一行怪談66
彼の背中に取り憑いている血塗れの妻を見て、さすが生前「私、あなたとの仲を引き裂く人間には容赦しないから」と言っていたことはある。
兄から譲り受けたZIPPOを使うと、炎の中で揺らめく苦悶に満ちた見知らぬ男の顔が浮かび上がり、兄が生前何をしでかしたのを理解した。
カップ麺に湯を注ぎ3分経ったので蓋を開けようとすると、中から小さな手が飛び出して蓋を掴み、「あと2分」と脳内でしゃがれた声が響いた。
ベビーカステラを買った娘に「食べ過ぎないでね」と注意すると、食べ終わったはずの袋から際限なくベビーカステラがこぼれてくる。
他人に流されやすい姉は、今日も顔のパーツや手足の指などを様々な人に持ち逃げされている。
ジグソーパズルを組み立てて出来上がった絵は、四肢をバラバラに引きちぎられた私の死体。
疲れ切った様子の弟に話を聞こうとすると、「あ、だめだ」と呟いた弟の頭が四散し、飛び散った血や脳髄の欠片は「やり直し」という字になった。
夫に生まれ年のワインを渡そうと考えているが、紀元前のワインがなかなか手に入らないので困っている。
傘から外れた肩が雨にぬれ、鉄の匂いがする紫色の液体に肩が濡れていく。
巷で話題の香水をつけてみると、最近は野良猫や烏たちにじっと見つめられることが多くなり、よく嗅いでみるとそれはわずかに死臭に似ている。
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