第64話 一行怪談64

 疲れが溜まっているせいだろうか、手が赤黒く粘るのも、家族が真っ赤に染まって倒れているのも、きっと疲れて幻覚を見ているんだ。


 ピッと音を立てて消えたテレビには、こちらを見て唇の端を釣り上げる少女が映っている。


 リンゴを私の台所に置いておくと、必ず2mmほどの小さな歯型がある。


 何の気なしに子守唄を口ずさんでいると、部屋のあちこちから大きな寝息が聞こえてきた。


 ポップコーンを作る機械を買ってみたので早速使ってみると、弾けたのは潰れた目玉だった。


 ヘッドホンを耳に当てて音楽を聴いていると、耳の中を舐められたので慌てて外すと、大きな舌が気まずそうにヘッドホンの中に消えた。


 以前生死の境をさまよった姉は、それ以来十字架を見るとうっとりとした目で見つめるようになった。


 兄が集めているミニカーは毎晩、家のあちこちをとてつもない勢いで駆け回るので、おかげで壁や床は傷だらけだ。


 私の愛読している文庫本は、時々文字が余白に移動してくるくると回っているので、非常に読みづらい。


 この店は出前を頼むと活きの良い子どもを提供してくれるので、大変重宝している。

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