第63話 一行怪談63
家族写真の中には赤子の私を愛おし気に抱く頭の潰れた女の写真があるが、その女の僅かに見える顔に私の面影が残っている。
うちの飼い猫がしゃがれた老婆の声で何かを呟くたび、町の幼子が爪を残して消えていく。
携帯のカメラスクロールには、さまざまな場所に捨てられている私の死体の写真がいくつもある。
娘の舌の裏には私に対する義母の怨嗟の言葉が刻まれているので、私は娘を愛せない。
息子の顔はいつもぼやけていて、私は息子の態度や仕草で感情を読み取らなければならない。
飼い犬が窓の外を見てしきりに唸っているが、外にいるのは私が処分した者の残留思念だから問題ないよ。
集中しすぎると周りが見えない私だが、以前料理に集中しすぎて片手をみじん切りにしてしまったのには参ってしまった。
携帯に留守電が残っていたが、「私の居場所を返せ」という録音だけ残されていたので、相手のしつこさに呆れつつも新しい顔を剥ぐ。
人に嫌われやすいことを友人は気にしているが、友人の周りにいる半透明の肉塊のせいだとは伝えず、今日も俺は友人を慰める。
年が明けたのはいいことだが、太陽が山の裾から見えた位置から動こうとしない。
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