第62話 一行怪談62

 息子は毎日壁のシミに向かって話しかけているが、ある日、「今日は一緒に遊べるんだって」と息子が嬉しそうに笑った時、壁のシミが脈打った。


 曾祖母はいつも笑顔を欠かさない人だったらしい、特に曽祖父の身内が死んだ時は曾祖母の頭の後ろの口が大きな声で笑い声をあげたそうだ。


 叔父の四十九日が終わった途端、一度は治まりかけていたポルターガイスト現象が再び起こり始めたので、今回も捧げる相手を間違っていたと私は頭を悩ませた。


 天井の隙間から垂れさがるせんべいのように薄い女は、今では私の良き相談相手です。


 姉が産んだ子はいずれも額に目が三つついており、どう考えても義兄の子であることは間違いない。


 義弟の部屋からは時々誰かと言い争う物音が聞こえるが、その翌日には必ず体の一部が抉れた野良猫の死体が見つかる。


 電話越しに聞く彼女の声は、いつ聞いても私が山に埋めた女の声。


 今日だって雪が舞う中、セミの鳴き声がいつまで経っても響き続けている。


「寒いから鍋が食べたい」という主人のお望み通り、今日は腕によりをかけて近所の手頃な子どもたちを捌くとしよう。


「今年の年越しそばはだしが違うのよ」と笑う妻に出されたのは、赤黒い駅に満たされた器の中で浮き上がる、頭皮がついた長い長い髪。

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